科学的根拠のある子育て・育児

乳幼児の下痢の時に、乳糖は避けるべきなのか?[スペイン編]

  •  下痢の時、乳糖を含まないミルクを使用するように

という指導もよくあるようです。

胃腸炎によって腸が荒れることにより、乳糖分解酵素が一時的に不足してしまうことがあります。
この場合、乳糖が消化しきれず、下痢の一因になるため、予め避けておくという考え方があるようです。

今回は、この方法にメリットがあるのかを触れた論文の解説をしようと思います。

ポイント

  •  小児の下痢の時、乳糖を避けるべきか検討した研究 
  •  乳糖を避けても、下痢の期間は短縮しなかった
  •  二次的に乳糖不耐となるのは6%ほど
マミー
マミー
下痢のとき、乳糖を避ける必要がありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

乳糖を避けるべきかは、様々な研究で検討されており、総合的な判断が必要と考えています。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、乳糖を避けるべきか検討した研究になります。

スペインで、1993年に報告されたランダム化比較試験(RCT)になります。

 対象患者

対象となったのは、

  •  乳幼児
  •  胃腸炎

の患者が対象です。

治療

治療は、脱水の補正を行なった後に

  •  通常のミルク 
  •  乳糖を含まないミルク

をランダムにわりつけています。

乳糖を含まないミルクの例として、日本ではノンラクトなどがあります(推奨ではありません):

created by Rinker
森永乳業
¥1,373
(2024/11/21 13:35:11時点 Amazon調べ-詳細)

研究結果

結果は以下の通りでした

1. 下痢の期間

下痢の期間は、以下の通りでした。

乳糖 含む
N = 32
含まない
N = 28
下痢の期間
(SD)
4.8日
(2)
4.4日
(3.1)

乳糖はあってもなくても、下痢の期間はほとんど変わらないですね。

2. 体重変化

体重の回復(平均)ですが、以下の通りでした。

乳糖 含む
N = 32
含まない
N = 28
体重の回復
(SD)
12.5 g
(235.8)
55.9 g
(238)

体重の変化もわずかな違いだったようです。

3. 排便の回数

排便の回数(平均)ですが、以下の通りでした。

乳糖 含む
N = 32
含まない
N = 28
排便の回数
(SD)
19.8回
(9.5)
12.8回
(10.5)

乳糖を含まないミルクのほうが、排便の回数はやや少ないようですね。

4. 二次性の乳糖不耐症の症例数

二次性の乳糖不耐症の症例は、乳糖を含むミルクを飲んでいた小児32人のうち、2名(6.3%)のみが該当したようです。

 感想と考察

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえて乳糖を除去するメリットは少ない印象ですね。

そもそも、乳糖を含まないミルクを飲んでも、下痢の期間や体重増加へのメリットは少ない印象です。

さらに、のちに乳糖不耐症と診断される乳幼児は6%ほどと、多くはありませんでした。先回りして乳糖を除去する必要があるのかは、やや疑問視されるデータでした。

Dr.KID
Dr.KID
今回のデータだけですと、乳糖を除去するメリットはあまりなさそうでした。

まとめ

今回は、乳児の下痢に対して、乳糖を避けるべきかを検討しています。

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえて乳糖をさける必要はなさそうな印象ですね。

乳糖を避けても、下痢の期間は短縮せず、むしろ体重の回復は改善しない傾向にありました。

また、胃腸炎患者のうち、二次性の乳糖不耐症となった小児はごく一部です。

類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。

 

●オススメの本です↓↓

created by Rinker
KADOKAWA
¥1,430
(2024/11/21 13:35:11時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
RELATED POST