2009年に発表された研究ですが、実際に行われたのは2002-2003年になります。
インフルエンザ生ワクチンの有効性を検証した研究になります。
一般的にインフルエンザワクチンは6ヶ月以降から接種可能で、多くの学術団体や公的機関は推奨しています。インフルエンザワクチンは不活化が一般的かと思いますが、近年は生ワクチン(フルミスト®︎など)が出現してい使用されることもあるようです。
生ワクチンの適応ですが、例えばアメリカなどでは24ヶ月(2歳)以降を適応にしています。日本でもフルミスト®︎を使用しているクリニックもあるようですが、同じ適応年齢で使用されているでしょう。
不活化ワクチンの方が抗体は付きづらく、効果が低いという点は以前より指摘されています。そこで、今回の研究は生後11〜24ヶ月をターゲットに、インフルエンザ生ワクチンの有効性を多国間・多施設で検討しています。
また、1歳付近ですとMMRワクチン(麻疹、風疹、ムンプス)も必要な時期ですが、これらと同時接種して問題がないかも検証しています。
研究の方法
今回の研究は- 2002-2003年のシーズンに行われた多施設共同ランダム化比較試験になります。インフルエンザ生ワクチンの有効性を検証しています。
アジア(バングラディッシュ、香港、マレーシア、フィリピン、韓国、タイ、シンガポール)、欧州(ベルギー、フィンランド、ドイツ、ポーランド)とメキシコで行われた研究になります。
対象となったのは、
- 11〜24ヶ月
- 慢性疾患なし
- 卵へのアレルギーなし
などが該当しています。
治療について
ワクチンは、
- インフルエンザワクチン + Priorix
- プラセボ + Priorix
のいずれかを2:1でランダムに投与しています。
インフルエンザワクチンは経鼻から投与する生ワクチンです。
最初の1回目はPriorix (ムンプス、麻疹、風疹の混合ワクチン) と一緒に投与しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- インフルエンザ
- 喘鳴
- 中耳炎
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に1233名が研究に参加し、
- インフルエンザ生ワクチン(LAIV) + MMR: 819名
- プラセボ + MMR: 414名
でした。年齢の中央値は13.5ヶ月でした。
全てのインフルエンザ感染
ワクチンの有効性ですが、全てのインフルエンザへの感染リスクの比較を見てみましょう。
グループ | 感染率 | VE | (95%CI) |
LAIV | 23/765 | 63.8% | (36.2, 79.8) |
プラセボ | 32/385 | Ref. |
プラセボのインフルエンザ感染率は8%ほどでしたが、インフルエンザワクチンを使用したグループは3%ほどに減少しています。
ワクチン株への感染
ワクチン株への感染は以下の通りです。
グループ | 感染率 | VE | (95%CI) |
LAIV | 9/765 | 78.4% | (50.9, 91.3) |
プラセボ | 21/385 | Ref. |
有効性の評価をワクチンで使用したウイルス株に限定すると、有効性はさらに高く推定されています。
ワクチンの副反応について
ワクチンの副反応は以下の通りでした:
1回目
LAIV | プラセボ | |
発熱(> 38.6) | 17% | 16% |
鼻汁 | 70.1% | 51.6% |
咳 | 39.5% | 37.9% |
咽頭痛 | 12.3% | 10.6% |
食欲低下 | 33.6% | 27.7% |
不機嫌 | 35.1% | 31.5% |
腹痛 | 8.8% | 5.9% |
鼻に投与するタイプのワクチンなので、鼻汁など上気道の症状がやや出やすいのかもしれないですね。発熱に関してはそれほど変わらないようです。
2回目
LAIV | プラセボ | |
発熱(> 38.6) | 5.6% | 6.7% |
鼻汁 | 55.7% | 50.1% |
咳 | 34.5% | 33.5% |
咽頭痛 | 6.4% | 7.7% |
食欲低下 | 17.0% | 20.5% |
不機嫌 | 19.0% | 20.3% |
腹痛 | 5.1% | 4.5% |
1回目と同じような傾向ですが、副反応の割合は低くなっていますね。
感想と考察
今回の研究はインフルエンザ生ワクチンの有効性と、MMRワクチンとの同時接種が可能かを検証しています。有効性はありそうですし、後者に関しては詳しくは説明しませんでしたが、問題なさそうな印象です。
インフルエンザ生ワクチンは2歳以降が基本なので、稀有な研究結果です。一方で、2007年に発表された論文によると[文献]、1歳未満においては、インフルエンザ生ワクチンを使用したグループの方が、不活化ワクチンと比較して、入院率が高かったとする報告もあるようです。これらの点から、「インフルエンザ生ワクチンは2歳以降」とされているのでしょう。これ以外にも、喘鳴の既往や喘息の診断がある小児でも使用しないように推奨されています。
まとめ
インフルエンザ生ワクチンが乳幼児に有効かを検討していますが、有効性は確かにありそうです。
一方で、この論文以外で2歳未満への投与に関して、入院率の上昇を示唆する論文が過去にあり、現在はフルミスト®︎などは基本的に2歳以降の接種となっています。