今回は、鉛中毒と「キレートチャレンジ」の尿分析に関してです。
この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。
- Choosing wisely:鉛中毒と「キレートチャレンジ」の尿分析
- ルーチンで検査をしない
Do not order “chelation challenge” urinary analyses for children with suspected lead poisoning.
American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely
鉛中毒が疑われる子供に「キレートチャレンジ」の尿分析をオーダーしてはならない[Choosing wisely]
Do not order “chelation challenge” urinary analyses for children with suspected lead poisoning.
The “chelation challenge” was formerly used to assess whether a child had a significant body burden of lead, or “lead poisoning,” and whether formal chelation would result in significant clearance of lead. Evidence exists that suggests that the chelation challenge has no better prognostic value than the standard blood lead level. Further, there is some evidence that the chelation challenge may in fact be potentially dangerous. In summary, chelation challenge has no clinical utility in the treatment of childhood lead poisoning today
鉛中毒が疑われる子供に「キレートチャレンジ」の尿分析をオーダーしてはならない。
「キレーションチャレンジ」は、以前は、子どもの体に鉛の負担が大きいかどうか、すなわち「鉛中毒」があるかどうか、また、正式なキレーションによって鉛が大幅に排出されるかどうかを評価するために使用されていた。
しかし、キレーションチャレンジは、標準的な血中鉛濃度に比べて、予後の判断材料にはならないことを示唆するエビデンスがあります。さらに、キレーション・チャレンジは実際には危険な可能性があるという証拠もある。以上のことから、キレート剤の使用は、今日の小児鉛中毒の治療には臨床的有用性がない。
考察と感想
鉛中毒と「キレートチャレンジ」の尿分析に関してでした。
私の経験不足もあってか、診療で鉛中毒を気にする機会がほとんどなかったので、なかなか想像が難しいですね。アメリカで一般小児をされている先生は、住居の築年数などで、こういったことも考えているようですね。
参考文献も読んでみようと思います:
American College of Medical Toxicology. Position statement on post-chelator challenge urinary metal testing. J Med Toxicol. 2010;6(1):74-75
Ruha AM. Recommendations for provoked challenge urine testing. J Med Toxicol. 2013;9(4):318-325
Soden SE, Lowry J, Garrison C, Wasserman G. 24-Hour provoked urine excretion test for heavy metals in children with autism and typically developing controls: a pilot study. Clin Toxicol.
2007;45(5):476-481
推奨の内容の割に、提示された文献数が少ないのは残念ですね。
まとめ
今回は、鉛中毒と「キレートチャレンジ」の尿分析に関するchoosing wiselyをご紹介しました。
これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。
(2024/10/30 07:56:59時点 Amazon調べ-詳細)
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/10/31 00:12:19時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています
当ブログの注意点について
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。