今回は、乗り物いに対してショウガは有効か、安全かを検証したRCTの紹介です。
- ショウガが乗り物酔いの有効化を実験室で検討したRCT
- ショウガは回転ベクションによる吐き気、胃の異常運動、血中のバソプレシン放出を効果的に抑制
- 乗り物酔いの予防効果が示唆された
Lien HC, Sun WM, Chen YH, Kim H, Hasler W, Owyang C. Effects of ginger on motion sickness and gastric slow-wave dysrhythmias induced by circular vection. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2003 Mar;284(3):G481-9. doi: 10.1152/ajpgi.00164.2002. PMID: 12576305
2003年に台湾から公表されたようです。
乗り物酔い予防におけるショウガの効果[台湾編]
研究の背景/目的
ショウガは古くから乗り物酔いを防ぐ代替薬として使われてきました。
しかし、その作用機序は不明である。
ショウガが胃の不整リズムの発生と血漿バソプレシンの上昇を防ぐことにより、乗り物酔いに伴う吐き気を改善すると仮説を立てた。
研究の方法
乗り物酔いの既往のあるボランティア13名に回転ベクションを行い、その際の吐き気(0〜3点、すなわち無〜重)、胃電図記録、血漿バソプレシン濃度を、ショウガの前処理を行った場合と行わない場合でクロスオーバーデザイン、二重盲検、無作為プラセボ比較試験により評価した。
研究の結果
回転ベクションは最大吐き気スコア2.5±0.2を誘発し、胃腸活動亢進および血漿バソプレシンを増加させた。
ショウガ(1,000 mgおよび2,000 mg)の前処理により,吐き気,頻脈,および血漿バソプレシンは減少した.
また、ショウガは吐き気発現までの潜伏時間を延長し、ヴェクション停止後の回復時間を短縮した。0.1および0.2 U/minのバソプレシン静注は吐き気を誘発し、胃活動低下を増加させたが、ショウガの前処理(2,000mg)はどちらにも影響を与えなかった。
結論
ショウガは回転ベクションによる吐き気、胃の異常運動、バソプレシン放出を効果的に抑制した。
このように、ショウガは乗り物酔いの予防と治療における新しい薬剤として作用する可能性がある。
考察と感想
「なんでショウガ?なんでバソプレッシン?」と疑問でしたが、著者らの以前の研究の経緯もあるようです。
例えば、著者らは、血漿中バソプレシン濃度の上昇が、回転ヴェクションによる吐き気の発生と消失に密接な時間的関係を示されており、神経下垂体から放出されるバソプレシンが吐き気を媒介するかもしれないと考えていたようです。
さらに、選択的バソプレシン拮抗薬は霊長類において乗り物酔いの症状を消失させた研究結果もあるようです。
このためショウガは胃の不整運動の発生と血漿バソプレシン濃度の上昇を抑制することにより、回転ヴェクションによる吐き気を改善するものと考えているようです。
またショウガは食べたのではなく、カプセルに入ったものを内服したようです。
1000 mgで十分なようで、実際に嘔気が誘発される潜伏時間は延長し、血中のバソプレッシン濃度の上昇も抑えられたようです。
まとめ
ショウガが乗り物酔いの有効化を実験室で検討したRCTとなります。
ショウガは回転ベクションによる吐き気、胃の異常運動、血中のバソプレシン放出を効果的に抑制し、乗り物酔いの予防効果が示唆されました。
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