ロペラミド(ロペミン®︎)が小児の胃腸炎の下痢の期間を短縮させたか、過去のデータを統合して研究した結果はこちらの論文になります。
少し古いものになりますが、2010年代にはあたらしい研究はなさそうですし、こちらの結果で十分な印象です。
また、こちらの論文でロペラミド(ロペミン®︎)の副作用が懸念されており、徐々に使用されなくなってきていることの反映かもしれませんね。
治療を評価するときに、有効性と副作用というコインの表と裏を意識する必要があります。今回は、有効性といういい面をメインに取り上げています。
副作用については、こちらをご参照ください。
研究の方法
今回の研究は、システマティック・レビューとメタ解析が行われ、
- Medline
- Embase
- Cochrane
などのデータベースから、12歳未満の小児においてロペラミドの有効性を検討した論文を網羅的に検索しています。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 下痢の期間
- 24時間時点で下痢が持続しているリスク
- 48時間時点で下痢が持続しているリスク
の3つを計測しています。
研究結果と考察
最終的に10個ほどの論文が選定され、そこからアウトカムを抽出してメタ解析が行われました。結果は以下の通りとなります。
下痢の期間について
下痢の期間は、ロペラミドを使用すると0.8日ほど短くなると推定されています。
24時間後の下痢の持続について
こちらは24時間後の下痢の持続について検証しています。
ロペラミドを使用した方が、下痢が持続するリスクは36%ほど低く出ています。
つまり、24時間時点で下痢が解決している可能性が高まります。
48時間以降について
こちらは48時間後に下痢があるか否かを調査した結果になります。
ロペラミドを使用したグループのほうが、下痢が持続している可能性は40%ほど低くなっています。つまり、ロペラミドを内服すると、48時間時点で、下痢が改善する可能性が高まるといえます。
考察と結果:有効性と副作用を天秤に
今回の有効性をみると、ロペラミドは小児の胃腸炎による下痢に対し、
- 持続時間を1日弱短くする
- 48時間以内の改善率が高い
といった結果が出ています。
ここだけを見ていると、ロペラミドが良さそうな気がしています。しかし、薬には副作用がつきもので、
- 約2%が消化器・神経系の副作用があり
- 腸閉塞(イレウス)や傾眠傾向は1%ほど
と推定されています。頻度としては高くはありませんが、乳幼児はよく下痢にかかりますし、このお子さんに毎回のようにロペラミドを処方していると、これらの副作用を起こしてしまうことがあります。
乳幼児の下痢は、基本的には水分・栄養をしっかりとっていれば、自然に軽快することがほとんどで、特別な治療は必要ありません。また、下痢がきになるようであれば、プロバイオティクス(整腸剤)を内服してもよいと思います。
基本的に自然に軽快する胃腸炎のお子さんに、可能性としては低いですが、腸閉塞(イレウス)など重い副作用のリスクのある薬を飲ませるのは、あまり望ましくないと考えています。
著者らは論文中で、こんな風に述べています:
In children who are younger than 3 y,……, adverse events outweigh benefits even at doses < 0.25 mg/kg/d
意訳しますと、「3歳未満の小児において、少量であってもロペラミドの副作用は利益より重くとらえるべき」と書かれています。私も同意見ですね。
まとめ
メタ解析では、ロペラミドは小児の胃腸炎による下痢に対し、
- 持続時間を1日弱短くする
- 48時間以内の改善率が高い
といった結果が出ています。
しかし、ロペラミドには副作用の懸念があり、この結果だけを鵜呑みにするのは危険と思います。
下痢の時は、効率的に水分を摂取する必要があります。