今回は他施設で行われたRCTの結果をご紹介します。
過去、ロペラミドの有効性を検討した論文はありますが、0.2 mg/kg/dayでは有効性を証明することができませんでした。
ロペラミドを含む薬には用量反応関係があることが多いので、安全であれば、もう少し量を増やして有効性があるのか検討するのは、理にかなった考え方と思います。
そこで、今回の研究では、
- 0.4 mg/kg/day
- 0.8 mg/kg/day
とプラセボを比較して、ロペラミドの有効性を検討しています。
研究の方法
今回はイギリスの
- リーズ
- ブライトン
- リバプール
- ロンドン
の4施設で行われたランダム化比較試験です。対象となったのは、
- 3ヶ月〜3歳
- 急性胃腸炎で入院
- 下痢の期間は2週間以内
- 慢性疾患や栄養不良なし
を対象にしています。
治療について
治療は補液療法に加えて、
- プラセボ
- ロペラミド 0.8 mg/kg
- ロペラミド 0.4 mg/kg
の3種類のいずれかをランダムに割付ています。
アウトカムについて
治療のアウトカムは
- 下痢の持続期間
- 体重の増加率
などを検討しています。
研究結果と考察
最終的に303人が解析の対象となり、102人がロペラミド 0.8mg, 101人が0.4 mg、プラセボが100人でした。
日齢は280日ほどが中央値、体重は 8kgが中央値でした。
下痢の改善:24時間以内
24時間以内に下痢が回復する割合ですが、以下の通りでして、プラセボグループの方が低かったです。
割合 | |
プラセボ | 17% |
ロペラミド 0.4mg/kg | 30% |
ロペラミド 0.8mg/kg | 32% |
下痢の期間について:24時間以降
(論文中のデータより作図)
下痢が持続している確率を時間経過とともに評価しています。
プラセボグループの方が、最初の2−3日は下痢が持続している可能性が高いです。逆に言うと、ロペラミドを使用したグループの方が、この期間は下痢が早く止まる可能性が高い印象です。
しかし、72時間以降はそれほど変わらない印象です。
体重の変化率について
体重が増加した人の割合は以下の通りでした
割合 | |
プラセボ | 36% |
ロペラミド 0.4mg/kg | 51% |
ロペラミド 0.8mg/kg | 58% |
プラセボグループの方が、やや割合が低いですね。
考察と感想
どうやらこの論文を参考にすると、ロペラミドは0.4〜0.8 mg/kgの量であれば下痢を止める効果がありそうな印象ですね。
劇的というより、最初の数日に変化を実感できる程度という解釈でしょうか。
逆に、使用後数日しても止まらない場合は、それ以上続けてもプラセボと結果は変わらなそうという印象でした。
有効性は仮にあるとして、あとは副作用との兼ね合いですね。
こちらの論文では詳しい報告はされていなかったです。
基本的にロペラミド(ロペミン®︎)は健常なお子さんの胃腸炎で処方することは、ほとんどないのですが、副作用の懸念が大きいのだと私は理解しています。この辺りのエビデンスを、今後、しっかり提示していければと思います。
あとは、この研究結果は日本で使用しているロペラミドの量よりかなり多いですね。この点も少し気がかりです。
まとめ
今回の研究は、ロペラミドは小児の下痢を短縮させる作用がありそうな印象でした。
しかし、健常な小児に使用すべきかは、副作用など安全性も配慮して、総合的に評価をするべきと考えています。
下痢の時は、効率的な水分・塩分・糖分の補給が必要ですね。