今回は、乗り物いに対して経皮吸収型スコポラミンは有効か、安全かを検証した研究の紹介です。
- スコポラミンの外用製剤の有効性を検証したRCT
- 中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効
- 口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はなかった
van Marion WF, Bongaerts MC, Christiaanse JC, Hofkamp HG, van Ouwerkerk W. Influence of transdermal scopolamine on motion sickness during 7 days’ exposure to heavy seas. Clin Pharmacol Ther. 1985 Sep;38(3):301-5. doi: 10.1038/clpt.1985.175. PMID: 4028625.
1985年に公表されたようです。
乗り物いに対して経皮吸収型スコポラミンは有効?
研究の背景/目的
我々は、フリゲート艦において、7日間連続する中・重海域での乗り物酔いの予防において、経皮スコポラミンの有効性と忍容性を評価するために、二重盲検プラセボ対照試験を実施した。
研究の方法
乗り物酔いの既往のある健康な船員49名を、経皮スコポラミン治療システム(TTS-S)または経皮プラセボ(TD-P)投与群に無作為に割り付けた。
パッチは出発の4時間前までに耳の後ろに貼られ、72時間後に剥がされた。
被験者は1日目から4日目、6日目に観察された。
研究の結果
TTS-S(スコポラミン)群では、最初の2日間で、乗り物酔いの自覚症状と吐き気の発生率がともに減少した。
2日目以降は適応によりTTS-S(スコポラミン)群とTD-P(プラセボ)群の乗り物酔いの兆候、症状の差は消失した。
最初の3日間、TTS-S(スコポラミン)群では嘔吐の発生頻度が少なかった。
6日目,パッチ除去後3日目に,TTS-S(スコポラミン)群では23%に嘔吐がみられたが,TD-P(プラセボ)群では嘔吐はみられなかった.
TTS-S(スコポラミン)群では作業能力が上昇したため、濃度には悪影響がなかった。
結論
中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効であり、口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はないことが示唆された。
考察と感想
ひどく荒れる海での船酔いに対して、スコポラミンは有効で、さらに重大な副作用はなかったようです。
あと、それぞれのグループで、乗り物酔いに対して「慣れ(habituation)」があったのも印象的ですね。
残念な点としては、日本ではスコポラミンの外用製剤はないことですね。
まとめ
スコポラミンの外用製剤の有効性を検証したRCTです。
中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効でした。
また、口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はないことが示唆された。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/20 09:50:45時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/19 13:14:51時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/11/19 13:14:52時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/20 00:57:26時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています