感染予防として、手洗い・マスクはよく言われますが、どのくらいのエビデンスがあるのでしょうか。
今回は、マスクの予防効果が気になったため、過去の研究を調べてみました。
ベトナムのハノイで行われた研究のようです。
感染者と接触した医療従事者と家族を中心に行われています。
- ベトナムの病院で行われた、SARSへの感染の予防因子を検討した研究です。
- マスク・ガウンはSARSへの感染予防策としては有効性がありそうで
- データに関して気になる箇所が複数ある
RAPID AWARENESS AND TRANSMISSION OF SEVERE ACUTE RESPIRATORY SYNDROME IN HANOI FRENCH HOSPITAL, VIETNAM. Am. J. Trop. Med. Hyg., 73(1), 2005, pp. 17–25
2003年のSARS流行時の研究です。
研究の概要
ハノイのとある病院で行われた、ケース・コントロール研究です。
検査でSARSと確定した患者・医療従事者をケースに、その人に接触したがSARSを発症しなかった医療従事者や家族をコントロールに行われています。
マスク、ガウン、グローブが予防因子となるかを検討しています。
結果
|
Case |
Ctrl |
論文 |
OR |
N |
25 |
90 |
|
|
接触前の手洗い |
12 |
51 |
1.0 |
0.71 |
接触後の手洗い |
15 |
56 |
1.1 |
0.91 |
マスク |
8 |
35 |
0.3 |
0.74 |
グローブ |
8 |
30 |
0.7 |
0.94 |
ガウン |
2 |
25 |
0.2 |
0.23 |
論文のテーブルとORが一致しなそうな印象でしたので、計算し直したのですが、単変量解析の値が一致しない点が気がかりでした、おそらく、欠損値を除外しているのでしょうが、それならば、その旨の数字を明記したほうが良いのではないでしょうか。
感想と考察
SARAに感染した患者の家族・接触した医療従事者において、手洗い、マスク、グローブ、ガウンによって感染予防が示唆されるようなデータでした。
やや症例数が少ない割に、多変量解析を行なっていたり、粗解析の単純比較のデータで整合性が合わなかったり、私の中で少し疑問の残る結果です。
まとめ
ベトナムの病院で行われた、SARSへの感染の予防因子を検討した研究です。
マスク・ガウンはSARSへの感染予防策としては有効性がありそうでした。一方で、データに関して、少し個人的に気になる箇所が複数ありました。
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