麻疹

大規模な麻疹アウトブレイク:ドイツの公立学校、2006年

2006年、ドイツのデュースブルク市で大規模な麻疹のアウトブレイクが発生し、614例のケースが報告され、そのうち54%が9歳以上でした。このアウトブレイクがなぜ発生したのか、ワクチン接種のカバレッジやワクチンの効果はどの程度だったのかを明らかにするため、Wichmannらはデュースブルクの公立学校における疫学調査を実施しました。この研究は、ワクチンの有効性を評価し、今後の麻疹のアウトブレイクを防ぐための対策を策定するための重要な情報を提供しています。

 
参考文献

Wichmann O, Hellenbrand W, Sagebiel D, Santibanez S, Ahlemeyer G, Vogt G, Siedler A, van Treeck U. Large measles outbreak at a German public school, 2006. Pediatr Infect Dis J. 2007 Sep;26(9):782-6. doi: 10.1097/INF.0b013e318060aca1. PMID: 17721371.

大規模な麻疹アウトブレイク:ドイツの公立学校、2006年

研究の背景/目的

2006年、ドイツのデュースブルク市で大規模な麻疹のアウトブレイク(614例)が発生し、その54%が9歳を超えるケースでした。麻疹の再発の原因を特定し、ワクチン接種のカバレッジとワクチンの有効性(VE)を評価するために調査が行われました。

研究の方法

アウトブレイクの初期に影響を受けたデュースブルクの公立学校で、後方視的なコホート研究が行われました。

10歳から21歳までの全1250人の生徒にアンケートを配布し、接種記録を抽出しました。ケースは標準的な臨床ケースの定義に従って特定されました。

研究の結果

アンケートは1098人(88%)の生徒から返却されました。859人の生徒から接種記録が抽出され、そのうち820人(95.4%)が少なくとも1回、605人(70.4%)が2回、39人(4.5%)が麻疹含有ワクチン(MCV)を接種していませんでした。2回の接種のカバレッジは、若い生徒の方が高かった。

53のケース(発症率=5%)が特定されました。麻疹ウイルスのsequencingにより、ジェノタイプD6が明らかにされました。

2006年にワクチンを接種した生徒と麻疹の既往歴がある生徒を除外した後、未接種の生徒の発症率は53%、1回接種の生徒は1.0%、2回のMCV接種を受けた生徒は0.4%でした。

1回の接種を受けた生徒でのVEは98.1%(95% CI:92-100%)、2回のMCV接種を受けた生徒でのVEは99.4%(95% CI:97-100%)でした。

接種記録のあるワクチン接種を受けた生徒と未接種の生徒、接種記録のない生徒の観察された発症率に基づき、参加した全生徒の中で1回の接種カバレッジは91%と推定されました。

結論

VEは高かった。ただし、アウトブレイクを防ぐためのワクチン接種のカバレッジは十分ではありませんでした。特に学年の高いの生徒において予防接種のギャップが見られました。

さらなるアウトブレイクを防ぐため、およびドイツでの麻疹の根絶を達成するために、ワクチン接種のカバレッジを増やす必要があります。

考察と感想

ドイツの麻疹の近年の歴史は以下の通りです:

  • ドイツでは、1991年にルーチンの幼児ワクチン接種スケジュールに麻疹-流行性耳下腺炎-風疹(MMR)ワクチンの第2回投与を追加し、1999年に麻疹の撲滅を目指す「麻疹、流行性耳下腺炎、風疹」の国家介入プログラムを実施するなど、ワクチン接種率を向上させるための措置が取られました。
  • これらの取り組みの結果、2004年には記録された最も低い麻疹の発生率(0.2/100,000人)が達成されました。
  • 2005年に2つのアウトブレイクにより麻疹の発生率が0.9/100,000にわずかに増加した後、2006年には報告義務が2001年に始まって以来最大の麻疹のアウトブレイクが北ライン=ヴェストファーレン州(NRW)で1,749件報告されました。
  • この大規模なアウトブレイクのため、2006年のドイツ全体の麻疹の発生率は2.8/100,000人に増加し、合計2,307件のケースが報告されました。
  • このアウトブレイクは、特にデュースブルク市で顕著で、2006年に504,400人の住民の中で614件の麻疹のケースが報告されました。この都市では、2001年から2005年にかけては4件の麻疹のケースのみが報告されていました。
  • デュースブルクの学校入学時の公式のワクチン接種率は、2002年から2004年の間に1回の接種で90%から92%、2回の接種で29%から70%に増加しました。

未接種の生徒の発症率は53%であったというのは、かなりインパクトのある結果でした。それだけ麻疹の感染力は強いのでしょう。

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。