前回はヴェポラッブの有効性を検証した研究をご紹介してきました。
ヴェポラッブは小児の夜間の咳に有効性があるか?【科学的根拠】
ヴェポラッブを塗ると皮膚の灼熱感があるが、体温は上がるのか?
ヴェポラッブはメントール(menthol)やユーカリ油が入っており、特に前者が咳や鼻閉に有効ではないかと考えられています。
成人ではメントールの有効性を検証した研究は複数あるようですが、小児では行われていなかったため、本研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究はイギリスの10-11歳の小児を対象に行われました。
- 研究参加に同意
- 喘息がない
- アレルギーがない
- 百日咳の既往がない
- 肺炎など気道感染がない
- 呼吸器疾患での入院歴がない
- 鼻の手術を受けたことがない
- 正期産
などを基準に対象者を決めています。
今回の研究はランダム化クロスオーバーデザインで行い、まず最初に
- メントール
- プラセボ(ユーカリ・オイル)
をランダムに割付ます。その後、
- メントール —> プラセボ
- プラセボ —> メントール
と治療を変更します。フェイスマスク付きの吸入器を使用して、メントールまたはプラセボ(ユーカリオイル)を吸入させたようです。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 鼻の気流速度
- 呼吸機能(肺活量や一秒率)
- 鼻の開通(主観)
- 咳の誘発試験
を行っています。
研究結果と考察
最終的に42人の患者が研究に参加しました。
- 鼻の気流速度
- 呼吸機能
に関してはメントールの有効性は認めませんでした。
一方で、鼻が開通している感じ(主観)は、メントールを使用した期間の方が良かったようです。
また、咳の誘発試験では、メントールを使用した期間の方が誘発される咳の数は少なかったです。
考察:研究結果について
今回の研究結果ですが、メントールはイギリスの10-11歳の小児において
- 鼻の気流速度や呼吸機能には影響しない
- 鼻の通りは良くなった気がする
- 咳が誘発されにくくなった
の3点に集約されると思います。
客観的な指標として変化を捉えることはできなかったが、主観的な指標では良くなった気がするという結果ですね。
もともと健常のお子さんを試験対象にしているので、呼吸機能や鼻の気流速度には影響しづらかっのかもしれません。
あるいは、メントールは独特の匂いがありますので、吸ったお子さんはメントールとわかっていたのかもしれません。「メントールは鼻の通りが良くなる」と言った情報を経験的に知っていたとしたら、その後の主観的な評価に影響を与えてしまう可能性があると思います。
考察:一般化について
- 「本人が鼻の通りが良くなって、咳が誘発されづらくなったというのなら、使っても良いのでは?」
と思われるかもしれません。
ただし、今回の研究は健常児でしかも10-11歳のイギリスの小児が対象です。
例えば風邪において同様の効果を発揮してくれるか、もっと低年齢のお子さんで同様の効果があるのかは、正直なところ今回の研究でははっきりとは分かりません。
もちろんメントールの有効性を否定したいわけではなく、必要以上に有効性を拡大解釈しない方が良いですよ、という意味です。
まとめ
今回の研究では、10-11歳の健常児において、メンソールは鼻の空気の通りが主観的に改善し、咳が誘発されにくくなりましたが、客観的な呼吸機能や鼻の気流速度は変化しなかったです。
実際に風邪に応用できるのか、他の年齢層に一般化できるのかは、他の研究を見ながら総合的に判断する必要があります。
メントールは10-11歳の健常児で…
- 鼻の通りが主観的に改善
- 咳が誘発されにくくなる
かもしれませんが、風邪で同様の効果があるか、他の年齢層にも一般化できるかは慎重に判断する必要がある。