日本の小児科外来で使用される制吐剤というと、ドンペリドン(ナウゼリン®︎)とメトクロプラミド(プリンペラン®︎)あたりがほとんどでしょう。
国外ではオンダンセトロン(ゾフラン®︎)が使用されていることもあるようです。
しかし、これらの薬の有効性を比較した研究はそれほど多くなく、特にドンペリドン(ナウゼリン®︎)とメトクロプラミド(プリンペラン®︎)あたりはわずかです。
今回、メトクロプラミド(プリンペラン®︎)とオンダンセトロン(ゾフラン®︎)、プラセボの有効性を比較した研究を発見したので、こちらでご紹介します。
Cubeddu LX, et al. Antiemetic activity of ondansetron in acute gastroenteritis.Aliment Pharmacol Ther 1997; 11: 185–191.
研究の方法
今回の研究は、イギリスで行われたランダム化比較試験で
- 6ヶ月〜8歳
- 胃腸炎による嘔吐
- 1時間以内に2回嘔吐あり
- 重篤な脱水はない
などが研究の対象となっています。
治療は、
- オンダンセトロン(ゾフラン®︎)
- メトクロプラミド(プリンペラン®︎)
- プラセボ
のいずれかを投与しています。投与は点滴から行い、盲検化もされています。
アウトカムは、
- 嘔吐回数
- 治療失敗/成功率
- 副作用
などを比較しています。
研究結果と考察
最終的に36人が研究に参加しました。それぞれの治療群に12人ずつが割り当てられています。平均年齢は、オンダンセトロンは1歳、メトクロプラミドは1.8歳、プラセボは2.5歳でした。
胃腸炎の原因はロタウイルスが半分程度です。
嘔吐症状について
異なる治療で嘔吐回数などを比較しています。
O = オンダンセトロン、M = メトクロプラミド、P = プラセボです。
O | M | P | |
嘔吐なし | 58% | 33% | 17% |
嘔吐回数 (平均) |
2 | 5 | 5 |
治療開始後90分以内に2回以上嘔吐あり or 投与終了後に3回以上嘔吐があるケースを、治療失敗としています。この割合は以下の通りでした。
O | M | P | |
治療失敗 | |||
0-8 h | 8% | 17% | 33% |
0-24h | 17% | 42% | 33% |
副作用について
メトクロプラミドは蠕動機能が亢進することがあり、下痢の回数が増えることがあります。3つのグループでの下痢の回数を比較すると、以下の通りです
O | M | P | |
下痢の回数 | |||
0-4 | 4 | 2 | 8 |
5-9 | 1 | 6 | 4 |
10-14 | 3 | 2 | 0 |
> 14 | 4 | 2 | 0 |
プラセボよりもオンダンセトロンやメトクロプラミドのグループのほうが、やや下痢が多いようにもみえます。
その他の重大な副作用はありませんでした。
感想と考察
今回の研究ですが、オンダンセトロンはメトクロプラミドやプラセボより、胃腸炎による吐き気・嘔吐を抑える効果が強そうな印象でした。
一方で、メトクロプラミドは、オンダンセトロンより劣るが、プラセボよりはやや有効か同程度の結果のようにみえます。
ややサンプル数の少ない研究ですので、嘔吐症状や副作用などの推定値は安定しないかもしれません。
あと、最初にも少し記載しましたが、年齢の偏りが少し気になります。
大人ですと1歳の違いはあまり気にならないかもしれませんが、小児の場合、平均1歳と2歳は随分異なるように思えます。もう少し規模の大きな研究が欲しいところですね。
まとめ
今回の研究ですが、小児の胃腸炎に対する制吐剤としての有効性ですが、メトクロプラミドはオンダンセトロンより劣るが、プラセボよりはやや有効か同程度の結果のようにみえます。
12例では重篤な副作用はありませんでしたが、オンダンセトロンやメトクロプラミドを使用すると、やや下痢の頻度が増えるかもしれませんね。