- 下痢の時、ミルクを薄めてください
- 腸を休ませましょう
という指示もあるようです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、炭水化物やタンパク質の吸収が悪くなることが知られています。このため、ミルクを薄めたり、ミルクを一旦中断して経口補水液に、切り替える必要性を感じる保護者や医療者がいるようです。
今回は、この方針にメリットがどのくらいあるのかを触れた論文の解説をしようと思います。
先に結論とポイントから述べましょう。
- 小児の下痢の時、ミルクを薄めたり、経口補水液に切り替える必要があるか検討
- ミルクをそのまま続けても、下痢の期間は変わらない
- 薄めたり、経口補水液に変更すると、体重の回復が遅れる傾向にある
基本的に、胃腸炎のとき、わざわざミルクを薄めたり、経口補水液のみにしたりする必要はないと考えられています。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクをそのまま続けてよいか検討した研究になります。
1983年に報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 胃腸炎で入院
となった小児が対象です。
治療
治療は、点滴による脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- 通常のミルク
- 経口補水液に制限し、その後にミルクを再開
- 経口補水液にし、その後は1/4、2/4, 3/4とミルクの濃度を徐々に濃くする
のいずれかをランダムに割り当てています。
研究結果
最終的に150人が参加しています。
結果は以下の通りでした:
- ミルクを継続しても、薄めたり、経口補水液に変更しても、入院期間はかわらなかった
- ミルクを薄めたり、敢えて経口補水液に変更すると、体重の回復が遅れる傾向にある
と分かりました。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、わざわざミルクを中断したり、経口補水液に変更する必要がなさそうなデータでした。むしろ、敢えて変えると、体重の回復が遅れる傾向にあったようです。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、ミルクを避けるべきか、薄めるべきかを検討しています。
ミルクを避けて経口補水液に変更しても、ミルクを薄めても、入院期間は短縮せず、むしろ体重の回復が遅れる傾向にありました。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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