科学的根拠のある子育て・育児

乳幼児が胃腸炎の時に、ミルクをやめて経口補水液を与えるべきか?[エジプト編]

  •  下痢の時、食事や母乳、ミルクはどうしたら良いですか?

という質問はよくあります。

医療者によって意見は異なるようですが、飲める・食べれる状況であれば、無理に食事やミルクなどの変更をする必要はないと考えられています。

今回は、そのエビデンスを見ていきましょう。

ポイント

  •  乳幼児を対象とした研究
  •  胃腸炎の時に、ミルクをやめて経口補水液に変更しても、メリットはほとんどなさそう
マミー
マミー
下痢のとき、食事やミルクはどうしたらいいですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

小児の下痢のときは、飲める・食べれる状況であれば、これまでの食生活を無理に変更する必要はないと私は考えています。

 研究の概要

今回は、エジプトで行われたランダム化比較試験(RCT)をご紹介します。

 対象患者

今回のRCTは200人を対象に行われました。対象となったのは、

  •  3〜18ヶ月
  •  下痢

のある乳児幼児が対象です。

治療

治療は、以下の4つのグループに分けています。

  1 2 3 4
〜4h G-ORS G-ORS G-ORS R-ORS
4〜24h SF RF お粥 R-ORS
24h〜 SF RF お粥 SF

(h, 時間; G-ORS; Glucose-based oral rehydration solution (ブドウ糖が中心の経口補水液); R-ORS, rice-based oral rehydration solution (米が中心の経口補水液); Soy-based lactose-free formula (豆乳でできた乳糖フリーのミルク); RF, Rice-based formula (米でできた人工乳))

ちょっとごちゃごちゃして分かりづらいですが、グループ4のみ、栄養の再開を意図的に遅らせたグループです。

研究結果

結果は以下の通りでした:

4つのグループで、

  •  体重増加率はほとんど変わらない
  •  下痢の期間もほとんど変わらない

という結果でした。体重あたりの下痢の排出量は、

  •  食事・ミルク再開を遅くしたグループの方がやや少ない傾向

という結果です。

 感想と考察

今回の研究結果では、乳児が対象ですが、胃腸炎による下痢のときに、特別、ミルクや食事の再開を遅らせても、下痢の期間はほとんど変わらず、体重増加にも影響がなさそうです。

飲食できる状態であれば、特別な制限は不要なのではないでしょうか。

Dr.KID
Dr.KID
下痢の時、無理に食生活を変更する必要はなさそうですね。

まとめ

今回は、乳児を対象に行われたRCTで、下痢のときに経口補水液の投与のみに制限すべきか、検討しています。

経口補水液のみに制限しても、下痢の期間や体重増加においてメリットはなさそうです。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。