今回の研究は、多系統炎症性症候群 (multisystem inflammatory syndrome:MIS‐C) に関する報告です。
この症候群は、新型コロナウイルスの世界的流行によって知られることとなり、pediatric inflammatory multisystem syndrome temporally associated with acute respiratory syndrome(PIMS-TS)とも呼ばれています。
韓国からの報告になります。
- 韓国からの報告
- 3次医療機関における川崎病の症例報告
- 川崎病の入院例は、例年と比較してかわりなし
- 韓国においては、新型コロナウイルスに関連したMIS-Cは報告時点ではいなかった
韓国から報告された論文です
研究の概要
背景・目的:
川崎病 (KD) は、乳幼児期に好発する急性熱性全身性血管炎であり、無治療の場合は冠動脈が発生することがある。
北アメリカおよびヨーロッパ諸国から、小児における新型コロナウイルスと関連して、川崎様疾患(Kawasaki-like disease)または多系統炎症性症候群 (multisystem inflammatory syndrome:MIS‐C) に関する報告が複数されている。
今回は、MIS-Cが韓国の小児で観察されているかどうかを検討した。
結果:
まず、韓国における基礎データであるが、川崎病の発生率は5歳未満の小児10万人当たり217.2人と推定され、北米およびヨーロッパにおけるの発生率よりも10~30倍高い。
韓国における新型コロナウイルスの最初の患者は2020年1月20日に同定されている。
また、小児における最初の感染者は2月19日に同定された。
感染者の急増は2月末に発生した。
2020年5月18日までに、韓国で新型コロナウイルスのPCR陽性を確認された小児(19歳以下)は11,065例中768例 (6.9%) であった。
その中で川崎病に類似した臨床症状の症例は記録されていない。
さらに、 2015年〜2020年までの各3か月間(2月から4月)に、韓国ソウルの2つの三次紹介センターにおいて、新規入院患者総数のうちKD患者数を検索した (図1) 。
期間中に14,714人の新しい入院患者の中で、合計429人の子供が川崎病と診断された
平均して、 川崎病患者の90%以上は0~5歳群であった。
公平な比較のために、全国の川崎病患者のうち、これら2つの三次医療機関に入院している川崎病患者の年間比率を調べた。
健康保険審査評価サービスウェブサイトから全国の年間KD患者の総数を検索し、この比率を計算した。
この比率は、 2015年から2019年までの各3か月間(2月から4月)で1.0%から1.4%の範囲で類似しており、川崎病関連の入院の増加は認めなかった。
新規入院患者100人当たりの川崎病患者数は、
- 2015年が3.5人
- 2016年が3.2人
- 2017年が3.0人
- 2018年が2.9人
- 2019年が2.2人
- 2020年が2.6人
であった(2月から4月)。
考察
川崎病の病因は、50年間の探索にもかかわらず、 未知のままである。
例えば、コロナウイルスNL63,や229Eおよびボカウイルスも川崎病との関連性が示唆されているが、明確な因果関係を明らかにすることはできなかった。
MIS‐Cまたは川崎様疾患の症例数が突然上昇に関する疫学的報告は、主に年長児で懸念されている。MIS‐C患者からのSARS‐CoV‐2の直接検出は、その臨床症状への寄与を示唆する可能性がある。
しかし、 新型コロナウイルスのパンデミックは時間とともに拡大する。このため、特異的SARS‐CoV‐2抗体の存在のみでは、 新型コロナウイルスがMIS‐Cにつながる異常な免疫応答を引き起こす因果関係を説明するには十分ではない可能性がある。
過去の川崎病の発生率の人種差を考慮すると、 新型コロナウイルスに関連するMIS‐Cの発生の増加を調査するために、グローバルな協力を確立すべきである。
さらに、新型コロナウイルスとの関連性をさらに解明するために、慎重なアプローチによる系統的研究が必要である。
感想と考察
韓国からの報告ですね。
欧州や北米からは、MIS-C/PIMS-TSはよく報告されていますが、日本や韓国からはないようです(私の知っている範囲ですが…)
川崎病というより、似ているけれども別の疾患なのでしょうか。本来、川崎病の多い日本や韓国、中国などでの報告が多くてもよさそうですが、不思議ですね。
まとめ
MIS‐Cまたは川崎様疾患ですが、韓国ではこの論文を執筆された時点では、三次医療機関においてはいなかったようです。
また、川崎病による入院率は、例年とほとんど変わっていないようです。
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