新型コロナウイルス

アメリカでのMIS-Cの特徴は?[症例集積]

今回の研究は、多系統炎症性症候群 (multisystem inflammatory syndrome:MIS‐C) に関する報告で、アメリカのコロンビア大学関連の小児病院での入院例です。

ポイント

  • アメリカのニューヨークで行われた、MIS-Cの症例集積研究です。
  • 発熱、発疹、消化器症状が多い
  • 結膜炎や口唇の症状は半数ほど
  • 治療としては、ステロイドやIVIGの使用が多い
マミー
マミー
新型コロナと川崎病って似ているのですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

この症候群は、新型コロナウイルスの世界的流行によって知られることとなり、pediatric inflammatory multisystem syndrome temporally associated with acute respiratory syndrome(PIMS-TS)とも呼ばれています。

 研究の概要

背景・目的:

最近まで、小児の新型コロナウイルス感染症の臨床経過は、大部分が軽度であると報告されている。

最近、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS‐CoV‐2) に曝露された小児の一部は、多系統炎症症候群 (MIS‐C) と呼ばれる症状を起こすことがわかってきた。
MIS-Cは、発熱と多系統臓器の機能不全を伴う全身性炎症を特徴とする状態で、重篤になる可能性がある。

胃腸症状はMIS‐Cの症状出現と関連することが認識されてきている。
このため、 MIS‐Cの診断を、胃腸感染症や炎症性腸疾患といった別の一般的な疾患と混同する可能性がある。
実際、英国の患者8人におけるMIS-Cについて記述した最初に発表された通信では、100%が消化管症状を示した。

同様に、イタリアにおいても、患者10人中6人に消化管の症状がみられた。
これは、成人が呼吸器症状を呈することが最も多く、消化管症状を報告するのは症例の10~15%未満であるのとは対照的である。

同様の症状および有病率がMIS‐Cの44人の患者(21歳未満)の比較的大きな米国コホートに広がったかを検討した。

方法

コロンビア大学Irving Medical Centerの小児病院でMIS‐Cの診断で入院した44人の患者の後ろ向きカルテレビューを行った。

対象期間は、2020年4月18日〜5月22日までの間である。

結果:

すべての患者は、臨床的に新型コロナウイルスに矛盾のない患者で、

  • SARS-CoV-2への曝露が証明された
  • RT-PCR(Roche Cobas ® SARS-CoV-2試験)によりSARS-CoV-2鼻咽頭スワブが陽性(34%;n=44)であることが証明された
  • ニューヨーク州保健局が承認したイムノアッセイ(97%;n=32)を用いたSARS-CoV-2スパイク三量体またはヌクレオカプシド蛋白に対する抗体が陽性

のいずれかを認めた。

症状について

消化管症状は84.1%の症例で認め、発熱 (100%) および発疹 (70.5%) を伴うことが最も多かった。

成人とは対照的に、25%のみが酸素投与を必要とし、 1例は挿管された。

興味深いことに、 入院前7日以内に29.5%は、他の全身症状を伴わずに、ウイルス性胃腸炎に矛盾しない症状(発熱や消化器症状(例えば、悪心、嘔吐、下痢))で受診していた。

患者の27%に糞便のPCRパネルを実施しましたが、陽性者は0%でした。
最初に消化管症状を呈した患者と、そうでない患者において、性別やBMIを比較したが、ほとんど差がなかった

検査結果

全体として、入院時の症例の大部分は、炎症性マーカーであるESR (中央値59)やCRP (中央値146.5)が著しく上昇し、アルブミン(中央値3.7)が軽度低下していた。

また、トランスアミナーゼ(ALTおよび/またはAST)は52.3%で上昇し、リパーゼは1人の患者で正常上限の3倍以上上昇した。

画像検査

腹部の画像検査は、患者の34.1% (n=15) で実施された。

所見は、腸間膜炎 (n=2) 、胆泥または無石胆嚢炎 (n=6) および腹水 (n=6) などであった。3名 (20.0%) の腹部画像は正常であった。

超音波 (US) または核磁気共鳴造影 (MRI) では、3人の患者で腸壁肥厚が明らかで、これは炎症性腸疾患の懸念を生じた。
しかし、付随する臨床症状はIBDの典型ではなかった(表1)。

 治療

ステロイド(メチルプレドニソロンおよび/またはヒドロコルチゾン)は42人の患者 (95.5%) に投与された。

他の治療はIVIG (81.8%) とアナキンラ (18.2%)を使用しており 、 90.1%は抗凝固療法を受けていた。

本報告書の時点では、1名を除いて全員が退院している。
機械的循環補助を必要とした1人の患者は腎代替療法を必要とした。

このなかでは死亡者は報告時点ではいなかった。

感想と考察

欧州や北米からは、MIS-C/PIMS-TSはよく報告されていますが、今回はアメリカからの報告ですね(そのため「MIS-C」と言っている)

症状や治療戦略のデータを蓄積することは重要ですね。

Dr.KID
Dr.KID
そのうち、システマティックレビューも出るんじゃないでしょうか。

まとめ

アメリカのニューヨークで行われた、MIS-Cの症例集積研究です。

発熱、発疹、消化器症状が多く、結膜炎や口唇の症状は半数に止まっていたようです。

治療としては、ステロイドやIVIGをメインに、支持的な治療を行なっていました。

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。