今回は、小児の夜尿症の治療が自尊心の回復につながるかを検討した研究をご紹介します。
- 夜尿症の治療後に態度や行動に変化が生じるかどうかを調べるた研究
- 行動療法を中心とした夜尿症の治療で、7割の夜尿症が改善
- self-concept scaleという心理的な指標面で改善が認められています。
Moffatt ME, Kato C, Pless IB. Improvements in self-concept after treatment of nocturnal enuresis: randomized controlled trial. J Pediatr. 1987 Apr;110(4):647-52.
1987年に公表されたようです。
夜尿症の治療後の自己像の改善:ランダム化比較試験[カナダ編]
研究の背景/目的
夜尿症の治療後に態度や行動に変化が生じるかどうかを調べるために本研究が行われた。
研究の方法
8歳から14歳の子ども121名を,条件付け療法を受ける群(n=66)と3ヵ月の待機期間を設ける群(n=55)に無作為に割り付けた。
すべての子どもは,研究開始時と治療後または待機期間後に,
- Piers-Harris Self-concept Scale(P-H)
- State-Trait Anxiety Scale(STAIC)
- Nowicki-Strickland Locus of Control test(NSLC)
を記入した。
保護者はAchenbach Child Behavior Checklist (CBCL)を記入した。
研究の結果
背景となる人口統計学的変数には、グループ間で統計学的な有意な差はなかった。
P-H尺度(P = 0.04)とその下位尺度のうち3つの尺度で、治療群の子どもたちは、治療を遅らせた子どもたちに比べて、統計学的に有意な改善が見られた。
この変化は,おもらし回数の減少が最も大きかった子どもたちで顕著であった。
CBCL,STAIC,NSLCのスコアの変化は,統計的な有意差を認めなかった。
結論
この年齢層では、おそらく慢性的なストレス要因である夜尿症を改善することで、精神衛生上のメリットが得られる可能性があると結論づけた。
考察と感想
行動療法ですが、具体的には
- おねしょアラームを使用
- 夕食後の水分摂取を制限する
- 改善しない時は、排尿コントロールのエクササイズや抗コリン薬の導入
を行なったようです。
治療グループでは69%で夜尿症の治療に成功していますが、コントロールでは1%のみでした。
Piers-Harris Self-Concept Scaleという指標のみ、治療したグループの方が改善率が良かったようですね。
とはいえ、この研究は特性上、盲検化が難しいため、バイアスを招いてしまっている可能性はあると思います。
まとめ
夜尿症の治療後に態度や行動に変化が生じるかどうかを調べるた研究になります。
行動療法を中心とした夜尿症の治療で、7割の夜尿症が改善し、self-concept scaleという心理的な指標面で改善が認められています。
こちらの書籍はとてもおすすめで、小児科医必読ではないでしょうか。
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