前回はイスラエルで行われた、小児の急性細気管支炎において、モンテルカスト(キプレス®︎;シングレア®︎)の有効性を検証した研究をご紹介しました。
今回はエジプトでも類似の研究が報告されていたため、こちらでご紹介させていただこうと思います。
モンテルカストは喘息の長期管理薬として重要な薬です。しかし、かぜや気管支炎などでも処方されているケースが多々あり、使い方をきちんと考える必用のある薬です。
急性細気管支炎と聞くと、RSウイルス感染症が起こしやすいですが、このウイルス以外にもヒトメタニューもウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルスなど、様々なウイルスが起こすこともあります。
研究の方法
今回の研究は、エジプトにて二重盲検ランダム化比較試験が行われました。対象となったのは、
- 1〜24ヶ月
- ウイルス性の細気管支炎と診断
- 慢性疾患のない
の入院患者を対象に行われました。
治療は、
- モンテルカスト
- プラセボ
のいずれかをランダムに割りつけています。治療薬は退院するまで毎日投与されています。
アウトカムは、
- 臨床スコア
- 入院日数
を指標にしています。
0 | 1 | 2 | 3 | |
呼吸数 | < 30 | 31-45 | 46-60 | > 60 |
喘鳴 | なし | 呼気終末に | 呼気時全体 | 聴診器なしで |
陥没呼吸 | なし | 肋間 | 気管胸骨 | 鼻翼呼吸 |
全身状態 | 正常 | 不機嫌 傾眠 哺乳不良 |
研究結果と考察
最終的に85人が研究に参加しました。患者背景の特徴は、
- 3.5ヶ月
- 男児が6割以上
- 30-40%で喘息の家族歴があり
- 母乳栄養は60%
でした。
臨床スコアについて
臨床スコアの推移は以下の通りです。
時間 | M n = 47 |
P n = 38 |
0h (SD) |
8.65 (1.79) |
8.68 (1.55) |
12h | 6.07 (2.16) |
6.96 (1.90) |
24h | 4.66 (2.29) |
6.08 (1.67) |
36h | 3.65 (1.95) |
4.91 (2.45) |
48h | 3.64 (2.58) |
4.50 (2.19) |
60h | 3.00 (1.83) |
4.58 (2.15) |
72h | 2.00 (0.70) |
4.50 (1.87) |
退院時 | 2.12 (0.66) |
2.42 (0.90) |
(*M, モンテルカスト; P, プラセボ)
統計学的な有意差があったのは、24時間時点のみですが、全体的に見渡すと24時間以降はモンテルカストグループのほうがスコアは低く、軽快傾向にあるようにみえます。
入院日数について
入院日数は以下の通りでした;
入院日数 | M | P |
全体 | 3.34 (1.38) |
5.42 (3.47) |
アレルギーの家族歴 | ||
あり | 3.53 (1.64) |
5.4 (3.66) |
受動喫煙 | ||
あり | 3.47 (1.36) |
5.14 (2.55) |
(*M, モンテルカスト; P, プラセボ)
患者全体を通して、モンテルカストを使用したグループのほうが入院日数が短くなっています。
さらにアレルギーの家族歴や受動喫煙のある小児のみに絞り込んで解析していますが、統計学的な有意差はないものの、同じような傾向にあります。
考察と感想
今回のエジプトで行われた研究では、小児の急性細気管支炎において、モンテルカストを短期的に使用すると、入院日数がやや短くなり、臨床スコアも使用後1日後くらいからやや改善している印象です。
おそらくモンテルカストは効きやすい人とそうでない人がいて、著者らもそれを感覚的に理解して「喘息やアレルギーの家族歴のある人」「受動喫煙」などで絞り込んだ解析をしています。
疫学的な表現をすると、effect measure modification(EMM)を疑っているのでしょうが、片手落ちのデータの提示です。
アレルギーの家族歴 | M | P |
あり | 3.53 (1.64) |
5.4 (3.66) |
なし | ??? | ??? |
この「???」の部分も提示して、初めてEMMの評価ができるわけです。
まとめ
エジプトで行われた研究では、小児の急性細気管支炎において、モンテルカストを短期的に使用すると、入院日数がやや短くなり、臨床スコアも使用後1日後くらいからやや改善している印象です。
他の研究もないのか探してみようと思います。
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