RSウイルス細気管支炎は乳幼児でよく起こる疾患ですが、この疾患に罹患したあとに、しばらく喘鳴(ぜーぜー)が起こりやすいことがあります。
ロイコトリエン拮抗薬であるモンテルカスト(キプレス®︎;シングレア®︎)やプランルカスト(オノン®︎)は気管支喘息の長期コントロールで使用していますが、こちらが効くかもしれないと考えて、RSウイルス細気管支炎後に投与されていることもあります。
今回の研究は、この治療法の有効性について検討しています。
研究の方法
今回の研究は、多施設でランダム化比較試験がされました。
対象となったのは、
- RSウイルス細気管支炎後
- 3~24ヶ月
- 入院後
- 慢性疾患なし
などを参考に患者が選ばれました。
治療は、
- モンテルカスト 8mg
- モンテルカスト 4mg
- プラセボ
のいずれかを4〜20週投与しています。
アウトカムは、
- 無症状の日の割合
- β刺激薬なしの日数割合
- 副作用
などを期間別にみています。
研究結果と考察
最終的に979人がランダム化され、
- プラセボ 328人
- モンテルカスト 4mg 327人
- モンテルカスト 8mg 324人
となりました。最終的に745名が研究を完遂しています。
患者背景は以下の通りです
- 7〜8ヶ月
- 男児が60%
- RAST陽性 50%
- 10日ほど入院
症状のなかった日の割合
症状のなかった日の割合(%)を4週、24週で比較しています。
4週まで
P | M4 | M8 | |
症状のない日 | 37% (30.7) |
38.6% (30.4) |
38.5% (29.9) |
(P = プラセボ; M4 = モンテルカスト 4 mg; M8 = モンテルカスト 8 mg)
3つのグループでは症状のない日の割合はほぼ同じでした。
12週まで
P | M4 | M8 | |
症状のない日 | 58.2% (27.8) |
60.8% (27.1) |
60.7% (27.2) |
悪化あり | 33.3% | 31.4% | 31.7% |
全身ステロイド使用 | 19.2% | 22.5% | 19.4% |
(P = プラセボ; M4 = モンテルカスト 4 mg; M8 = モンテルカスト 8 mg)
3つのグループでは症状のない日の割合はほぼ同じでした。
悪化した人の割合や、全身ステロイドが必要だった人の割合も変わりませんでした。
副作用について
薬の副作用もいくつか評価しています。
P | M4 | M8 | |
下痢 | 12.9% | 19.7% | 15% |
発熱 | 27.4% | 28.3% | 24.8% |
下痢はモンテルカストを使用したほうが、やや多い印象ですね。
考察と感想
今回の研究では、モンテルカストを通常量、高用量で使用しても、呼吸器症状のなかった日の割合は減る印象はありませんでした。また、下痢の副作用のリスクが上昇する可能性が示唆されています。
著者らはpost-hoc解析もしていて、治療開始五14日で呼吸器症状が続いている小児に関しては、モンテルカストが有効そうな印象があったようです。
この「症状が続きそうな人」の要素がわかれば、もう少し別の研究もできそうですね。
まとめ
全体として、モンテルカストをRSウイルス細気管支炎後に使用しても、呼吸器症状のなかった日の割合は減る印象はありませんでした。また、下痢の副作用のリスクが上昇する可能性が示唆されています。
一方で、post-hoc analysesによると、有効そうな人が一部でいるかもしれません。