マイコプラズマ肺炎で入院した日本の小児のデータを参照すると、クリンダマイシンが約20%で使用されているようです1。
ちなみに私はマイコプラズマでクリンダマイシンは全く使用したことがなかったため、この結果に非常に驚いています。
マイコプラズマ肺炎に対するクリンダマイシンに関してですが、Nelson’s textbook of pediatricsやRedbookといった小児科・感染症の教科書にはそもそも記載がありません。
日本小児科学会から発表された「小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方」2でも、クリンダマイシンは肺炎マイコプラズマ感染症に対するエビデンスは不十分で、マクロライド耐性例にはクリンダマイシンも耐性であることが多く、使用は推奨されていません。
クリンダマイシンはマイコプラズマ肺炎に有効なのか?
ここで気になったため、実際にクリンダマイシンの有効性を検討した研究があるか調べて見ました。
こちらの結果によると、クリンダマイシンはマイコプラズマ肺炎に対する有効性の科学的根拠は不明確です3。
マイコプラズマ肺炎の患者にクリンダマイシン、テトラサイクリン、プラセボのいずれかをランダムに投与し、発熱期間を比較しています。
プラセボと比較して、テトラサイクリンは発熱期間が短縮しましたが、クリンダマイシンはプラセボとほぼ同じような発熱期間で、有効性は認められませんでした。
現代のマイコプラズマ肺炎にクリンダマイシンが推奨されない理由
近年のマイコプラズマは、マクロライド耐性である確率がかなり高いです。
マイコプラズマ肺炎にクリンダマイシンが推奨されない理由の1つに、マクロライドとの交差耐性(Cross-resistance)があげられます。
2010年に報告されたcluster RCTの結果になりますが、アジスロマイシンを1〜10歳にトラコーマの予防・治療として使用したところ、鼻腔内の肺炎球菌がマクロライドだけでなく、クリンダマイシンにも耐性が生じやすい傾向にあったようです。
マイコプラズマでも同様の結果が得られるかは不明確ですが、マクロライド耐性を疑った時点で、クリンダマイシンにも交差耐性が生じている可能性を考慮する必要がある好例と思います。
まとめ
2010-14年の日本の入院患者データでは、クリンダマイシンが20%前後で使用されていたようです。
過去のRCTでは、クリンダマイシンはマイコプラズマ肺炎に対して有効性は認めておらず、現代はマクロライド耐性のマイコプラズマが多いため、クリンダマイシンに対しても交差耐性を示す可能性がそれなりに高いと思います。
参考文献
- Okubo Y, Michihata N, Morisaki N, et al. Recent trends in practice patterns and impact of corticosteroid use on pediatric Mycoplasma pneumoniae-related respiratory infections. Respir Investig. 2018;56(2):158-165. doi:10.1016/j.resinv.2017.11.005
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日本小児科学会. 小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方. https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_130219_2.pdf. Accessed August 21, 2019.
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Smilack JD, Burgin WW, Moore WL, Sanford JP. Mycoplasma pneumoniae pneumonia and clindamycin therapy. Failure to demonstrate efficacy. JAMA. 1974;228(6):729-731. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4595103.
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