- マクロライド耐性マイコプラズマにかかるとどうなるのか?
- 発熱期間はどのくらいか?
マイコプラズマ肺炎については、こちらで簡単に解説しています。
近年、日本を含むアジアではマクロライド耐性率が非常に高く、臨床医を悩ませています。耐性化した場合、薬の選択肢としては、キノロンやテトラサイクリンなどが使用されますが、中には安全性の懸念があり、使いづらいものもあります。
一方で、マクロライドには抗菌活性以外にも、免疫調整作用があると考える方がいます。都合よく解釈すると、たとえマクロライド耐性で抗菌活性が無効になったとしても、免疫調整作用が発熱を軽減させると考えることもできます。
今回の研究では、マクロライドの感受性を調べた上で、マクロライド内服後の臨床経過をおった論文になります。
Suzuki S, et al. Clinical Evaluation of Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae. Antimicrob Agents Chemother. 2006 Feb; 50(2): 709–712.
研究の方法
今回の研究は、日本国内の3箇所の外来/入院で行われた研究です。
対象となったのは、
- マイコプラズマに感染した小児
などが該当しています。
暴露について
今回は耐性化 vs. 非耐性化で比較しているので、治療ではなく暴露としています。
- マクロライド耐性(MR)
- マクロライド感受性 (MS)
でグループ分けをして、アウトカムを比較しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- 発熱期間
- マクロライド使用中の発熱期間
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に37人の小児が対象となり、マクロライド耐性が11人、感受性ありが26人になります。年齢は耐性グループは9歳、感受性グループは5.5歳が中央値でした。
14員環マクロライド(クラリスロマイシンなど)は、耐性グループでは72.7%は、感受性グループでは26.9%が処方されていました。
発熱期間(平均)
発熱期間を耐性グループ(MR) vs. 感受性グループ(MS)で比較しています。
MR N = 11 |
MS N = 26 |
|
発熱期間 | 9.3日 | 5.5日 |
投薬前 | 3.8日 | 4.1日 |
投薬後 | 4.3日 | 1.4日 |
マクロライド投与前の発熱期間は変わらないですが、投薬後の発熱期間は感受性のあるグループの方が発熱期間は短い傾向にありました。
発熱期間 (中央値)
こちらは中央値を用いて、発熱期間を耐性グループ(MR) vs. 感受性グループ(MS)で比較しています。
MR N = 11 |
MS N = 26 |
|
発熱期間 | 8日 (4-19) |
5日 (2-9) |
投薬前 | 3日 (1-10) |
4日 (1-8) |
投薬後 | 3日 (1-11) |
1日 (1-5) |
マクロライド投与前の発熱期間は変わらないですが、投薬後の発熱期間は感受性のあるグループの方が発熱期間は短い傾向にありました。
抗菌薬の変更について
MR N = 11 |
MS N = 26 |
|
抗菌薬の変更 | 7 (63.6%) |
1 (3.8%) |
マクロライド耐性グループの方が、抗菌薬変更する割合が多かったですね。100%じゃない点を見ると、中には自然軽快した人がいるのでしょうね。
感想と考察
発熱期間という基準がメインですが、耐性菌か否かで臨床像の違いをみた研究で面白かったですね。
サンプル数が少ない、交絡の対処がされていないなど、統計学的な問題はあるものの、臨床像にマッチしている印象ですね。日本ではこの論文が出た後も耐性菌は増えているので、もっと大規模な研究を見てみたいですね。
まとめ
マクロライド耐性マイコプラズマは、発熱期間がやや長く、抗菌薬をマクロライドから変更する必要がある可能性が高かったです。
一方で、耐性菌であったとしても、全例で抗菌薬の変更が必要というわけではない点は興味深いです。
感受性株と比較して、マクロライド耐性のマイコプラズマは、
- 発熱期間は数日ほど長い傾向
- 抗菌薬の変更が6割ほどで必要
と示唆されていました。
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