感染症

マイコプラズマ感染症について

マイコプラズマ感染症まとめ

  • マイコプラズマにかかると、風邪、肺炎、気管支炎を起こします
  • 5歳〜12歳の学童でよく起こります
  • 5%くらいの感染者が肺炎になります
  • 治療には抗生物質が使用されます
  • 軽症であれば、抗生物質は必要ありません
Dr.KID
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まずはポイントから!

マイコプラズマって何ですか?

ナメクジみたいな形をした微生物がマイコプラズマの正体です。
本名は『Mycoplasma pneumoniae (マイコプラズマ・ニューモニア)』という名前がついています。

マイコプラズマ感染症は4年に1度大流行する

詳しい理由はわからないのですがマイコプラズマ感染症は、オリンピックの開催する年に流行する傾向にあります。

現に、2016年も流行しました。

流行しやすいのは秋〜冬ですが、マイコプラズマの患者は春も夏もそれなりにいます。

マイコプラズマの感染力は(麻疹などと比べて)それほど強くはないのですが、咳などから飛沫感染するため、家族や学校などの施設内で流行します。

Dr.KID
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なぜかオリンピックイヤーに流行る。

マイコプラズマに感染するとどうなりますか?

マイコプラズマは、気道、つまり口、鼻、喉、気管支、肺を好む生き物です。
そのため、マイコプラズマに感染すると、風邪・気管支炎・肺炎などの症状がでます。

乾いた咳が続くのが特徴

感染後の症状として多いのは、咳・咽頭痛・頭痛です。
軽症のことも多く、風邪と区別がつかないことがほとんどです。
痰がらみのない『乾いた咳』をするのが特徴です。

悪化すると気管支炎・肺炎になります

マイコプラズマに感染しても、軽い風邪症状で終わることがほとんどですが、悪化した場合、気管支炎や肺炎を起こします。

大体ですが、マイコプラズマにかかった子供のうち、5%くらいが肺炎になると言われています。

マイコプラズマに感染しやすい年齢

マイコプラズマに感染しやすいのは、5歳以上の小児です。
3歳未満で感染することは稀で、仮に乳幼児が感染しても、軽症で経過することがほとんどです。

Dr.KID
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3歳以下でも、全く感染しないわけではありません。

マイコプラズマ感染の検査って?

マイコプラズマ感染症の検査にはいくつか種類があります。
よく利用する検査は;

  1. 胸部レントゲン
  2. 血液検査
  3. 迅速検査
  4. 遺伝子増幅検査

の4つでしょう。

1.レントゲンについて

胸のレントゲンをとります。
『間質性肺炎像』といって、淡い陰影が広がっていることがあります。
レントゲンで片側の下肺野に浸潤影を認めることが多いです。
特に浸潤影は右中葉に多いのが特徴です。

 

胸水が合併しているのも特徴的です。

2.血液検査(抗体価測定)


マイコプラズマの血液中の抗体の量をみます。
抗体の値が、1回で320倍以上であれば診断となります。
また、ペア血清といって、初回と4週間後で4倍以上の変動がある場合もマイコプラズマに感染していると判断します。 

血液検査の欠点として、即日で分からない、痛みを伴う、2回検査が必要、と患者さん・医療者ともに負担がかかるため、行われないことも多々あります。

3.迅速検査 (IgM)

 

この検査は即日で結果がわかるので、開業医ではよく使用されているようです。
ですが、便利である反面、問題点が多い検査法でもあります。

この迅速検査は、偽陽性や偽陰性が多いです。
例えば『陽性』とでても、今まさに感染しているのか、過去に感染があっただけなのか、区別がつきません。
この検査方法だと、3ヶ月前にマイコプラズマに感染して、現在は感染していなくても『陽性』と判断してしまうことがあります。

また、『陰性』とでても、『マイコプラズマに感染してないですよ』ともいいきれません。

特に、症状が出現して間もないと(<1週間)、この検査の信頼性は落ちます。

このようにはっきりしない検査ですので、インフルエンザや溶連菌の検査のように気軽に行わない医師も多くいます。

極端な方針かもしれませんが、私個人としてはこの検査はしない方針でいます

4.遺伝子増幅検査(PCR法 or LAMP法)

マイコプラズマのDNAを検出する方法です。
かなり精度の高い検査ですので、『陽性』の場合は信頼できる結果です。
欠点として、結果がでるのに数日程度の時間を要する点です。

マイコプラズマ感染の治療

ここからはマイコプラズマ感染の治療について説明していきます。

抗生剤は必須ではないですよ 

『マイコプラズマが心配なので、抗生剤をください』

と相談されることがあります。

お気持ちは十分わかりますが、抗生剤は必ずしも必要ありません。
そもそもマイコプラズマは弱毒菌で、放置していても風邪の症状のみで、自然軽快することがほとんどです。

近年、アジアでは耐性菌がすごい勢いで増えており、使用できる抗生剤がかなり限られています。
軽症であれば抗生剤を使わずに様子をみるのも選択肢の一つです。

Dr.KID
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全員に抗生剤が必要なわけではありません。

抗生剤の選択肢について

良く使用されるのは

  • マクロライド系:クラリス・クラリシッド,ジスロマック
  • キノロン系:クラビット,オゼックス
  • テトラサイクリン系:ミノマイシン

です。抗生剤には、それぞれにメリット・デメリットがあります。

例えば、マクロライド系はよく処方される薬で、安全性は確立されていますが、日本のマイコプラズマでは耐性菌がかなり多いです。

キノロン系は有効ですが、アキレス腱や関節などが痛んでしまうリスクがあります。

テトラサイクリン系も有効ですが、8歳未満に使用すると歯牙黄染のリスクになります(歯が灰色になることがあります)

マイコプラズマ感染の合併症について

マイコプラズマ感染には、様々な合併症があります。

代表的なのは、発疹、中耳炎、貧血、髄膜炎、関節炎、心筋炎などがあります。
発疹が有名なのが「多形滲出性紅斑」ですが、重症化するとStevens-Johnson症候群という重症な発疹になってしまうため、注意が必要です。

まとめ

マイコプラズマ感染は軽ければ風邪症状、悪化すると気管支炎・肺炎をおこすことがあります。

症状が軽ければ抗生剤を使用せずに様子をみるのも選択肢の1つです。
耐性菌がかなり増えており、使える薬が減ってきています。

Dr.KID
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抗菌薬の適正使用が重要です。

マイコプラズマ感染症について

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。