- 急性・慢性の副鼻腔炎に鼻洗いが効くかもしれない
- アレルギー性鼻炎に鼻洗いが効くかもしれない
など、様々な報告がされています。
今回もこれらの報告のうち、急性副鼻腔炎(かぜの延長ととらえてください)の小児を対象に、鼻洗いの有効性を検討した論文をご紹介させていただきます。
鼻洗いは古くはインドで、ヨガの準備として行われた歴史があるようです。
かぜやアレルギー性鼻炎などでも有効性が広まり、さらに安価におこなえるため、インドだけでなく、他国でも行われるようになってきているようです。
研究の方法
今回の研究は、2006年〜2008年にかけて台湾で行われたもので、
- かぜ症状が7日以上ある
- Water’s法で鼻粘膜の浮腫などがある
- 鼻の手術歴なし
- 慢性疾患なし
- 年齢は3〜12歳
を対象にランダム化比較試験がおこなわれました。
治療について
治療は、急性副鼻腔炎の標準的な治療(抗生剤や充血除去薬など)に加えて、
- 鼻洗いあり
- コントロール
の2グループにランダムにわりつけを行なっています。
鼻洗いは外来で指導され、破棄可能なシリンジに15〜20mlほどの0.9%の生理食塩水を入れて、1日に1〜3回ほど使用しています。
レントゲンを撮影する数日前には鼻洗いをやめるように指導をしています。
研究のアウトカム
研究のアウトカムについては、
- nPEFR(nasal peak expiratory flow rate) :鼻の通気性
- 鼻の症状
- QOL(生活の質)に関する質問
- Water’s法で行ったレントゲン所見
などを指標にしています。
副鼻腔炎の症状は、
- 0: なし
- 1: 軽度
- 2: 中等度
- 3: 重度
となっています。
研究結果と考察
最終的に69人の患者が参加し、うち30人が生理食塩水による鼻洗いを、残りの39人はコントロールとなっています。患者背景としては、
- 平均6歳
- やや男児が多い
- アレルギー性鼻炎が鼻洗いグループに多い(53.3% vs. 28.2%)
- 家族歴(AR, AD, AS)はほぼ同じ
(*AR, アレルギー性鼻炎; AD、アトピー性皮膚炎;AS, 急性副鼻腔炎)
となっています。
nPEFRについて
機械で鼻を通る空気の速度を計測しましたが、その改善率は以下のとおりでした
鼻洗い | あり | なし |
中間日 | 17.0% | -9.5% |
最終日 | 31.2% | -20.3% |
鼻洗いをしたグループのほうが、nPEFRは改善している一方で、そうでないグループはむしろ悪化しています。両者に統計学的な有意差も認めたようです。
Water’s法での副鼻腔の所見
レントゲン所見の改善率をみています。
鼻洗い | あり | なし |
最終日 | 31.9% | 26.9% |
統計学的な有意差はなかったものの、鼻洗いをしたグループのほうが、やや成績が良いようです。
症状の改善
改善した症状をピックアップすると、
- 日中の鼻汁が減少した
- 夜間の鼻閉が改善した
など、鼻にまつわる症状が改善する傾向にありました。
感想と考察
全体としては鼻洗いは、急性副鼻腔炎の鼻の症状については軽快させる印象がありそうですね。
これは個人的にも実感しており、鼻を洗うことで、鼻の通りがすっきりとします。
研究の欠点としては、盲検化が難しい点につきます。
主観的な評価は、鼻洗いをしなかったグループが厳しめになってしまうことは、ある程度予測されます。
また、nPEFRの計測、レントゲン所見の計測は、計測者を盲検化することで、多少はバイアスを減らすことができますが、どの程度行えていたのかの明確な記載がありませんでした。
気になる点としては、アレルギー性鼻炎の患者が偏っている点ですね。
本来であれば、アレルギー性鼻炎のある患者とない患者に層別化をしてサブグループ解析をするか、回帰分析などのモデルで対処したほうがよいと思いました。
ですが、この論文ではなぜかアトピーのある人/ない人にわけて検討しており、少し理解に苦しむ内容でした。
まとめ
今回の研究は台湾で3〜12歳の急性副鼻腔炎を対象に、鼻洗いの有効性を検討しました。結果として、日中の鼻汁や夜間の鼻づまりの症状を軽快させ、鼻腔の開通が改善しました。
懸念点としては、交絡と計測エラーによるバイアスが残っている可能性がある点です。