急性鼻副鼻腔炎は鼻腔や副鼻腔炎に炎症が生じた状態を言いますが、風邪をひいた後に生じることがあります。
多くの場合、風邪をひいて7〜10日後に症状が悪化し、咳、鼻汁、顔に痛み、鼻閉などが生じます。
これまでは、急性鼻副鼻腔炎に対して、抗生剤の内服治療を使用した研究もされていますが、有効性がはっきりしないものもありました。このため、
- 鼻洗い
- ステロイドの点鼻
などの有効性の検討もされつつあります。
今回の研究では、古典的な治療法と鼻洗い+ステロイド点鼻の有効性を比較しています。
研究の方法
今回の研究は、2012-2013年にされたランダム化比較試験で、
- 5〜18歳
- 10日以上のかぜ症状
- 膿性鼻汁がある
- レントゲンで以上所見がある
- アレルギー性鼻炎はない
- 抗菌薬の投与は受けていない
- 慢性疾患なし
を対象に研究がされています。
治療について
治療は、
- 標準治療:
抗菌薬 + 充血除去薬の点鼻
(*アモキシシリン・クラブラン酸+キシロメタゾン) - 鼻洗い + ステロイド点鼻
(120 mlの鼻洗い を1日2回 + フルチカゾン 400 mcg)
のいずれかをランダムに割付ています。
アウトカムについて
研究のアウトカムは、
- 症状の改善
- レントゲン所見
- 吸気時の鼻の通気速度
- 血液検査
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に91人が研究に参加し、内訳は
- 抗菌薬 + 充血除去薬の点鼻:45人
- 鼻洗い + ステロイド点鼻: 46人
でした。患者背景は、
- 年齢:12〜13歳
- やや男児が多い
傾向にありました。
Clinical Severity Scoreについて
Clinical Scoreは、それぞれの臨床的な症状に点数を与えて計測したものですが、以下のように計算しています(論文より拝借)
こちらの得点を経時的に追っていますが、
標準治療 | 鼻洗い | |
初日 | 12.92 | 12.23 |
1週間 | 11.78 | 7.86 |
2週間 | 7.07 | 6.85 |
3週間 | 6.54 | 5.77 |
となっています。
1週間後のスコアが大きく差が開いているようで、統計学的な有意差もありました。
その後は、同じくらいのスコアになっています。
これ以外の症状ですと、睡眠の質も鼻洗いのグループの方が良かったようです。
レントゲン所見について
レントゲン所見は1枚の画像で32箇所をチェックしたようです。その結果を比較すると、以下のようになりました。
標準治療 | 鼻洗い | |
初日 | 27.18 | 26.53 |
3週間 | 9.68 | 8.37 |
差 | 17.5 | 18.14 |
両者はほぼ同じようなスコアですが、初日と3週間後の差をとってみると、鼻洗いグループの方がやや成績は良さそうですね。
ですが、このスコアの差が臨床的にどのくらい意義があるかは、慎重に検討する必要がありそうです。
鼻の通気速度
吸気時の鼻の通気速度を確認して、鼻の通りを評価しています。
標準治療 | 鼻洗い | |
初日 | 43.46 | 41.87 |
3週間 | 61.37 | 75.09 |
差 | 18.11 | 33.22 |
鼻洗いグループの方が、鼻の通りはよくなっていそうですね。
考察と感想
今回の研究結果ですと、急性鼻副鼻腔炎に対して、抗生剤+充血除去薬という古典的な治療より、鼻洗い+ステロイド点鼻の方が症状、レントゲン所見、鼻の通気、いずれも改善していそうな印象でした。
気になった点としては盲検化をどこまでできたかです。
治療に関しては、鼻洗いする/しないは盲検化が不可能ですので、この点は仕方ないと思います。
レントゲンや通気量の評価は盲検化はされていたようなので、評価者によるバイアスを避ける努力はできているようです。
5〜18歳の小児が対象で、平均年齢が12歳ほどですので、小学校高学年〜中学生くらいが多かったのでしょうか。
鼻洗い120mlは、慣れている人からすれば全然苦痛はないのですが(私とか…)、最初にやる人はちょっと抵抗感を示したかもしれませんね。
また、今後、この年代より低い乳幼児の時にどうするかは、さらに検討の余地がありそうですね。過去の研究では、ミストタイプの点鼻でも、1mlの生理食塩水でも有効性は示された研究もありました。
まとめ
今回の研究は、5〜18歳の急性鼻副鼻腔炎を対象に、抗生剤と充血除去薬 vs 鼻洗いとステロイド点鼻の有効性を比較しています。
後者の方が、自覚症状や鼻の通気速度、レントゲン所見もより改善しそうな印象でした。
私も副鼻腔炎持ちでして、痛みがきついときは、無理せずに鎮痛薬を使用しています。