出産後の新生児の最初の沐浴のタイミングは、いろんな国でもディベートになっているようです。
保護者からすれば、どのように沐浴させるのかを確認する機会ですし、医療者からすれば沐浴のタイミングによって新生児の体温が変動しないか気になるところです。
出産後の新生児の沐浴のタイミングについては、議論は分かれています。例えば、アメリカ小児科学会などの学術団体は、出産後24時間以降、特に最初の母乳が終わった後にするべきと述べています。
この方針にもエビデンスがあり、例えば、出産後の入浴を遅くしたところ、母乳栄養をトライして、継続してくれる親の割合が増えたとされています。
また、生まれてすぐに入浴させて、胎便や血液の付着物を落とす(胎脂は落とさない)のは、皮膚など衛生上の問題で重要かもしれません。
しかし、デメリットとして、短時間でも入浴させることで、皮膚についた水分からの気化熱により、低体温になってしまう恐れがあります。
低体温の何が問題かですが、呼吸抑制・徐脈・血圧低下・低血糖などのリスクが上昇するため、可能な限り避けたいところです。
その一方で、例えば日本国内で行われた研究ですが、厳密に室温を管理し、タオルを温めるなど綿密にケアをしていれば、正期産・正常体重のお子さんであれば、入浴による影響はなさそうという結果も出ています。
これまでご紹介してきた研究は、出生後すぐに入浴させたものです。今回、ご紹介するのは、3時間後、6時間後、9時間後に入浴させた場合に、体温がどのように変化するのかを観察しています。
研究の方法
今回の研究は、アメリカにて、入浴のタイミングによって体温がどのように変動するかを、観察研究しています。対象となったのは、
- 37週以降
- 英語が話せる母親
- 多胎ではない
- 低血糖なし
- 抗菌薬の投与なし
- 先天性疾患なし
などを参考に、参加者を選んでいます。
観察した項目について
まず、入浴させた時間は3パターンあり、出生後の
- 3時間
- 6時間
- 9時間
のいずれかで(ランダムに割り振ったのではない)、入浴後の5分、30分、60分、120分で体温の推移を見ています。体温は腋窩で計測したようです。
室温は22.2℃に、お湯の温度は37.8℃に設定し、ベビーソープも使用したようです。
研究結果と考察
最終的に75名が研究に参加し、3、6、9時間目に入浴した人数はそれぞれ25人でした。特徴として、
- 経膣分娩が63%
- ヒスパニックが73%
- 週数は39.1
- 平均体重は3330g
- 男児が53%
でした。
腋窩温の変化について
体温の変動は以下の通りでした(図は論文より拝借):
Fahrenheitでちょっとわかりにくいですが、37.0℃は98.6℉です。
要点を説明しますと、出生後早期に入浴させた方が、体温は低下しやすい傾向にありました。統計学的な有意差があったのは、出生後3時間 vs. 9時間でして、0.1℃ほどの差がありました。
入浴前後での体温の変動をみると、
- 入浴直後:0.3℃
- 入浴5分後:0.4℃
- 入浴30分後:0.3℃
- 入浴60分後:0.2℃
- 入浴後120分後:0.1℃
となっています。
考察と感想
Fahrenheit(℉)は、マイルやポンドと同様、いつまでも慣れないので、直感的に読みづらくなってしまうのは仕方ないですね。
時間があれば℃に変換しようと思いましたが、noteの記載などの時に直させてもらうということで、ご容赦いただければと思います。
入浴後の体温の変動に関してですが、確かに出生後から沐浴までの時間が短い方が、変動は大きそうな印象です。ですが、沐浴のタイミングが新生児の体温に与える影響はそれほど大きい訳ではなさそうです(0.1℃ほど)。
注意したい点としては、日本で行われた研究ほどではありませんが、こちらの研究も室温を調整したり、沐浴の温度を調整したりと、体を拭く時の手順など、それなりに気を使ってきちんと管理されている点です。
きちんとした管理がないと、新生児は低体温になるリスクがありますので、あまり拡大解釈はしすぎない方が良いでしょう。
まとめ
今回の研究は、アメリカにおいて、最初の沐浴のタイミングが、新生児の体温に与える影響を見ています。
出生後3、6、9時間後の沐浴で、体温がどの程度変動するのかを確認しています。どのタイミングで入浴させても、沐浴前後で最大で0.4℃ほどの変動でした。一方、沐浴のタイミングによる体温の違いは0.1℃ほどであり、いつ入れるのかはそれほど大きく影響しないのかもしれません。