- 「こどもがカゼを繰り返していて心配です」
- 「こどもがよくかぜを引くのですが、大丈夫でしょうか?」
小児科外来でよく質問される内容です。この素朴な質問にも、きちんと答えようと思ったらデータを参照する必要があります。
一般的に乳幼児は成人よりウイルス感染症にかかりやすく、かぜをひきやすいです。成人の2〜3倍ほどかぜを繰り返すので、大人からするとこどもがカゼを繰り返して心配になるのは当然のことでしょう。
こどもが年間どれくらい風邪をひくかは目安があります。
今回はこちらの総説をみながら考えてみましょう。
Heikkinen, et al. The common cold. Lancet 2003; 361: 51-59.
乳幼児、学童、成人はどのくらいかぜをひくのか?
横軸は年齢、縦軸は1年間でかぜをひく回数を示しています。
この図をみると、最初の1〜2年間は年間6回前後もかぜを引いているのがわかります。3−4歳ごろから徐々にかぜをひく回数が減って、10代になるとかぜの回数はほぼ成人と変わらないのがわかります。
例えば子育て世代の場合、年間でかぜをひく回数は2回前後です。
自分の倍以上、こどもがかぜを引いてしまい、心配になるケースも多々ありますが、「こどもは大人よりかぜをよくひく」という当たり前の事実をデータから知っておくと、余分な不安を和らげることができるかもしれませんね。
かぜの原因は?
かぜは医学的には「急性上気道炎」ですが、原因はウイルスであることがほとんどです。
かぜを起こす病原体の分布をみると、以下の通りです:
ウイルス | 割合 |
ライノウイルス | 30-50% |
コロナウイルス | 10-15% |
インフルエンザウイルス | 5-15% |
RSウイルス | 5% |
パラインフルエンザウイルス | 5% |
アデノウイルス | < 5% |
エンテロウイルス | < 5% |
ヒトメタニューモウイルス | 不明 |
不明 | 20-30% |
「〇〇ウイルス」と聞くと、必要以上に恐れたり、必要以上に診断を確かめたくなる保護者や医療者、あるいは保育園や学校の先生もいます。
基本的にはライノウイルスやコロナウイルスといったウイルスが原因です。これらのウイルスは普通の小児科外来では検査できないですし、原因ウイルスがわかったところで有効な治療はないので、基本的に検査はしません。
インフルエンザもRSウイルスなども、通常のかぜと一緒で、特別な治療がなくても治ります。
ただ、インフルエンザやアデノウイルスの場合は、通常のかぜより少し長く熱がでるかもしれません。
RSウイルスは1−2歳未満の乳幼児が罹患すると、喘鳴を起こして呼吸が苦しくなり入院が必要になることがあります。一方で、大半のお子さんは軽い風邪症状で軽快してしまうことがほとんどです。また「RSウイルス迅速検査」の保険適応は1歳未満が基本です。
また、検査をしたところで治療方針にはほとんど影響しないので、1歳以上で必要以上に検査をすることを好まない小児科医がいるのも知っておくとよいでしょう。
少し異なる特徴がありますが、基本的にはかぜの延長線でかんがえるとよいでしょう。
ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスと似たような症状を起こすことがあります。こちらも近年は迅速検査が可能になっていますが、「6歳未満で、肺炎を強く疑うとき」が原則です。こちらも通常のかぜでは検査しませんし、有効な治療法もなく、自然に治るのを待つのが基本です。
まとめ
こちらの論文ではかぜを引く回数や、原因となる病原体が提示されていました。
乳幼児はかぜをひきやすく、年間に平均6回前後といわれています。年齢とともに頻度は徐々にへっていき、10代で成人と同じくらい(平均2−3回)になります。
普通に生活をしていると、どのくらいかぜをひくのか、知っておくとよいでしょう。
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