小児の胃腸炎のケア(看病)で最も重要なのは、適切な水分・塩分・糖分の摂取になります。
胃腸炎の場合、嘔吐を繰り返すことがあり、水分摂取などが困難になるケースがあります。
制吐剤の有効性について検討された研究はいくつかあります。最も効果がありそうなのは、オンダンセトロンですが、保険の適応などもあり、日本の一般小児科外来で使用できることはほとんどありません。
一方で、ドンペリドン(ナウゼリン®︎)やメトクロプラミド(プリンペラン®︎)は古くから小児科でも使用されてきた薬です。今回の研究は、オンダンセトロンとメトクロプラミド(プリンペラン®︎)の制吐剤としての有効性を検証した研究をみつけたため、ご紹介させていただきます。
研究の方法
今回の研究は、2008年にカタールで行われた二重盲検ランダム化比較試験です。対象となったのは、
- 1〜14歳
- 急性胃腸炎による嘔吐症状が持続している
- 基礎疾患がない
などを参考に研究参加者を募っています。
治療は、
- オンダンセトロン
- メトクロプラミド
のいずれかをランダムに投与しています。投与方法は経静脈(点滴)で単回投与となります。
研究のアウトカムは、
- 嘔吐の軽快
- 副作用
などを指標にしています。
研究結果と考察
最終的に167人の患者が参加しました。年齢の中央値は3歳です。
嘔吐症状は1〜2日、受診24時間前からの嘔吐回数は5〜6回、下痢は5〜6回ほどでした。
研究のアウトカムについて
薬を使用後の嘔吐症状については以下の通りでした。
O | M | |
N | 84 | 83 |
嘔吐消失 | 68 (81%) |
60 (72%) |
嘔吐消失までの時間 | 39 min (111) |
61 min (110) |
外来滞在時間 | 550 (427) |
575 (449) |
下痢の回数 | 1.7 (2.2) |
1.3 (2.5) |
*O = オンダンセトロン;M = メトクロプラミド
嘔吐症状の消失はオンダンセトロンのほうがよさそうな印象ですが、統計学的な有意差はなかったようです。
外来滞在時間、下痢の回数といった指標はほぼ同じですね。
神経系の副作用に関しては認められなかったようです。
考察と感想
急性胃腸炎による嘔吐症状に対して、オンダンセトロンとメトクロプラミドの有効性を検討しています。
やや意外な結果で、オンダンセトロンのほうが少し嘔吐症状の軽快率が高く、効果発現までの時間が短い傾向でしたが、思ったほど改善効果に違いはなかった印象です。
メトクロプラミドのほうが古い薬で、安価で使用できるため、有効性があまりかわらないようなら、こちらを選ぶという考えかたもあってよいと思います。
また、今回の結果ではプラセボがない点が少し残念な気もしました。実際に薬を使用しない場合と、これらの薬を使用した場合との差のデータももう少しあったほうがよいと考えています。
まとめ
今回の研究は、カタールの1〜14歳の小児の急性胃腸炎による嘔吐症状に対して、オンダンセトロンとメトクロプラミドの有効性を検討しています。
やや意外な結果で、オンダンセトロンのほうが少し嘔吐症状の軽快率が高く、効果発現までの時間が短い傾向でしたが、思ったほど改善効果に違いはなかった印象です。
単施設での研究ですので、他の研究結果も参考にしながら、最終的に判断したいところです。