抗インフルエンザ薬の適応について、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)5, アメリカ小児科学会(AAP)6、アメリカ感染症学会(IDSA)7が見解を述べています。それぞれの見解から、小児インフルエンザにおける抗インフルエンザ薬の適応は、
- インフルエンザ感染症によって入院した小児
- 重篤な合併症や進行性の病気を持つ小児
- 合併症の危険性が高い小児
- 発症から48時間以内の健常児で、症状の短縮が望ましいと考えられる症例
と記載されています。
合併症の危険性が高い小児とは、5歳未満(特に6ヶ月〜2歳未満)、気管支喘息がある、基礎疾患がある、アスピリン内服中、高度肥満などが該当します。
抗インフルエンザ薬の健常児への投与に関しては、インフルエンザは大半が自然に軽快する点、抗インフルエンザ薬の過剰使用は耐性化を招く恐れがあるため、慎重に検討する必要があると考えています。
オセルタミビル(タミフル®︎)の有効性
抗インフルエンザ薬が小児のインフルエンザの症状の軽快にどの程度有効であったかを検討したシステマティック・レビューとメタ解析があります8。まずはオセルタミビル(タミフル®︎)に注目してみていきましょう。
タミフルは発熱期間を1日ほど短縮
この研究によると、気管支喘息のある小児にオセルタミビルを使用しても、発熱期間は短縮しませんでした(平均発熱期間の差, 5.2時間;95%CI, -11〜21.4時間)。
一方で、健常な小児のみを対象に行なった解析では、発熱期間が平均29時間ほど短縮する効果がありました。
タミフルは入院率は低下させず
さらに、外来患者でオセルタミビルを使用することで、入院率を下げることができるか検討をしています。が、むしろ入院率が1.9倍やや上昇しています[RR, 1.9; 95%CI, 0.70–5.23]。入院自体が稀ですので、RDに換算すると非常にわずかな差です[RD, 0.5%; 95%CI, -0.7%–1.6%; NNT, -200]。
タミフルは中耳炎や気管支炎を予防するかも
入院率を下げる効果はなさそうでしたが、急性中耳炎や気管支炎を予防する効果はありそうです。例えば、オセルタミビルを使用したグループは、プラセボと比較して中耳炎の合併リスクは0.8倍となっています[RR, 0.80; 95%CI, 0.62–1.02]。リスク差に換算すると、2%ほどリスクが下がったことになります[RD, -2%; 95%CI, -4%–0%; NNT, 50]。
急性気管支炎に関しては、オセルタミビルを使用したほうが合併するリスクは0.65倍となります[RR, 0.65; 95%CI, 0.27–1.55]。リスク差に換算すると、1%ほどリスクが下がったことになり、NNT は100です[RD, -1%; 95%CI, -8%–1%; NNT, 100]。
タミフルは肺炎や副鼻腔炎は予防しなそう
一方で、肺炎を予防する効果は、リスク比でみても[RR, 1.06; 95%CI, 0.62–1.83]、リスク差でみても[RD, 0; 95%CI, -2%–2%]、ほとんどなさそうな印象です。急性気管支炎は予防効果がありそうで、肺炎はなさそうという不思議な結果になっていますが、研究のため綿密に外来フォローされていたため、軽い気管支炎の段階で診断されていたのかもしれませんね
急性副鼻腔炎に関しても、リスク比は1.0 (95%CI, 0.58–1.72)、リスク差は0 (95%CI, -2%–2%)となっており、オセルタミビルは予防効果がほぼなさそうです。
まとめ
以上をまとめると以下の通りになります。
副作用について
副作用は腹痛、下痢、吐き気などが調査されていますが、オセルタミビルを内服してもリスク上昇はありませんでした。一方で、オセルタミビルは嘔吐のリスクが1.7倍に上昇しています(RR, 1.70; 95%CI, 1.23 to 2.35)。リスク差でみると5.5%であり、NNHは19となります。つまり、19人をオセルタミビルで治療すると、プラセボと比較して嘔吐をする人が1人増える計算です。