便秘症に関してよくあるアドバイスですが、
- 水分をしっかり取りましょう
- 食物繊維を取りましょう
- 運動をしましょう
などと言われることがあると思います。
以前もブログやnoteで執筆しましたが、水分摂取が便秘症の改善に役立つ可能性はあまり高くはなく、食物繊維の摂取量は効果があるかもしれないという結果でした。
一方で、運動はどうでしょうか?今回は、それをテーマにした研究があったので、こちらで紹介させていただこうと思います。
- NHANESを用いて行われた研究
- 便秘症のある人の方が、身体活動度が低い人の割合が多い
- 食物繊維が便の硬さに与える影響は、身体活動度が高いグループのみで認められた
アメリカからの報告です。
身体活動度、食物繊維と便秘症はどのくらい関連しているのか?[アメリカ編]
研究の背景/目的
食物繊維摂取量と便秘の関係に及ぼす身体活動の影響については、これまで包括的に研究されていない。本研究では、身体活動の影響を探ることを目的として行われた。
研究の方法
アメリカの国民健康・栄養調査(NHANES)2005-2010年の3周期のデータを取得し、20歳以上の参加者13,941名を対象とした。
多重ロジスティック回帰分析を用いて、食物繊維と便秘との間の独立した関連を調査した。
また、異なる身体活動グループにおける食物繊維と便秘の関係を分析するために、相互作用分析を行った。
研究の結果
身体活動の低い参加者では、食物繊維の摂取と便の硬さには関連は認められなかった(OR、1.02;95%CI、0.98-1.05;P = 0.407)。
一方で、身体活動の高い参加者では、食物繊維の摂取量が1グラム単位で増加すると、便秘のオッズが3%減少する傾向にあった(OR、0.97;95%CI、0.94-0.99;P = 0.020)。
さらに、食物繊維摂取量と便秘の関係は、身体活動のレベルが異なるグループで有意に異なっていた(相互作用あり)。
しかし、食物繊維の摂取量は、非活動的な参加者では便の頻度とは関連していなかった(OR、0.99;95%CI、0.94-1.05;P=0.767)し、身体活動的な参加者でも同様の傾向であった(OR、1.01;95%CI、0.97-1.04;P=0.751)。
結論
食物繊維摂取量の増加は、身体活動度の高い参加者では便の硬さ(便秘)と関連していたが、非活動的な参加者では関連していなかった。
しかし、食物繊維摂取量の増加は、排便回数との関連は認めなかった。
考察と感想
同じ食物繊維量を摂取するしていたとして、身体活動度が異なるため、それを考慮した解析をしたのでしょう。
例えば、食物繊維の摂取量が1g増えると、硬い便のオッズは、
- 身体活動度が低い:OR 1.02 [0.98-1.05]
- 身体活動度が高い:OR 0.97 [0.94-0.99]
と、身体活動度が高いグループのみで効果が示唆されたようです。
一方で、排便の回数に関してですが、食物繊維の摂取量が1g増える毎に、排便回数が多くなるオッズは、
- 身体活動度が低い:OR 0.99 [0.94-1.05]
- 身体活動度が高い:OR 1.01 [0.97-1.04]
とほとんど影響がなかったようです。
一方で、身体活動度と便秘に関してはどうでしょうか:
便秘あり | 便秘なし | |
身体活動高い | 71.6% | 78.0% |
身体活動低い | 28.4% | 22.0% |
便秘症のある人の方が、身体活動が高い人の割合が低い(71.6% vs. 78.0%)にあったようです。
まとめ
今回の研究は、便秘症における食物繊維の摂取量と身体活動度を調査した研究結果です。
便秘症のある人の方が、身体活動度が低い人の割合が多い傾向にあったようです。
また、身体活動度の高い人のみで、食物繊維が便の硬さを改善させる効果を認めたようです。
これらの因果に関しては、別の研究が必要と思います。
詳しいデータはnoteの方で執筆しています:
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 09:53:24時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 13:16:41時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/11/21 13:16:42時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています