ITPの診断は基本は臨床診断ですが、骨髄検査は診断の一助になります。
一方で、骨髄検査をすべきか否かは意見が分かれており、その点は昔から議論されています。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
著者らは、小児の急性ITPにおいて、末梢血検査で孤立性の血小板減少のみで、凝固異常がなければ、骨髄検査などさらなる検索は基本的には不要と考えている。
しかし、多くの権威たちは、白血病や再生不良性貧血などのルールアウトに、骨髄検査は必須であると主張している。
方法
1958〜1970年にHospital for Sick Children (London)に白血病で入院した小児218名のデータにおいて、孤立性の血小板減少の例があるのかを検討した。
1988年1月~1998年1月の10年間において、骨髄検査を受けた全ての患者記録を後ろ向きにレビューした。データは病院と外来患者の医療と病理記録から集めた。
結果
218名の小児白血病患者において、22名の末梢血塗抹では、blast cellを認めなかった。このうち、7名は血小板数 < 50,000/μLであった。
この7名のうち、1名のみは好中球数は正常であったが、その患者のヘモグロビンは 5 g/dLであり、肝脾腫を認めた。
結論
病歴および検査所見がITPに矛盾しなければ(孤立性の血小板減少であれば)、診断のための骨髄検査は必須ではないことが示唆された。
一方で、ステロイドを使用する際、慢性化した場合などは、骨髄検査をして診断の確かさを確認する必要はあるのかもしれない。
考察と感想
検査所見がITPに矛盾しないとありますが、具体的には
- 血小板数低下( < 5〜15万/μL)
- WBC > 4,500/μL + 分画は正常
- Hb > 11 g/dL (女) or Hb > 13 g/dL (男)
- 末梢血塗抹は正常 (赤血球の形態異常やBlast cellの出現なし)
- 黄疸、肝脾腫、リンパ節腫大なし
- 血小板減少の原因となる薬剤投与歴なし(ヘパリン、キニジン、キニン、スルファ剤、サイアザイド系利尿薬)
- 凝固能は正常:PT, aPTT正常、fibrinogen正常
などが、別の論文で述べられていました。
今回の研究は小児の症例になりますが、白血病患者においては、いずれかに該当する例ばかりだったようですね。
一方で、小児の初めての論文というのもあり、やや保守的な結論になっています。
まとめ
今回は、小児216名の白血病において、初期の段階で典型的なITPの所見のみ(孤立性の血小板減少のみで、その他の異常なし)を認めるか検討しています。
この216名においては、1例も孤立性の血小板減少を認めておらず、小児のITPの診断には、必ずしも骨髄検査は必須ではないことが示唆されています。
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