今回は、小児ITP(免疫性血小板減少症)の自然経過を報告した国際調査の結果です。少し古めの論文ですが、重要な報告と思います。
- 2009年のアルゼンチンからの報告
- 頭蓋内出血を起こしたのは3名(0.21% [95%CI, 0.04–0.62%])
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児における特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の人口統計学、転帰、および治療方針は国によって異なる。
いくつかの因子が転帰に影響するようだが、診断時にどの患者が急性または慢性疾患を有するかを予測することは不可能である。
また、慢性ITPにおける高い自然寛解率が報告されている。
方法
2009年にアルゼンチンから報告された研究になります。
1981年から現在までに小児のITPと診断された1,683人の患者に関するデータを提示する。このうち、小児ITP1,418例の転帰を評価した。
結果
2歳までに発症のピークがあり、男児のほうが多い傾向があった。
3つの年齢グループでの回復率は、以下の通りであった:
- 2~12か月:89.8% (247/275) [95%CI, 85.6-93.1]
- 1~8歳::71.3% (656/920) [95%CI, 68.3-74.2]
- 9~18歳:49.0% (103/210) [95%CI, 42.1-56.0]
血小板数<10 x 10^9/Lおよび既往歴は、12ヶ月以上の小児においてのみ、高い寛解率と関連していた。
NOPHOグループが開発したスコアは、急性ITPに対して83.9%の予測値を示した。
診断から6か月〜11年の間の自然寛解は、脾摘をしていない小児慢性ITPの325名のうち107名 (32.9%) で達成され、その44.9%は診断から6〜12か月の間で達成された。
結論
年齢とNOPHOグループのスコアが主な予後の予測因子であった。
1歳未満の乳児は、他の予後因子に影響されない短い経過と非常に高い回復率を示す特殊な集団である。
年齢とスコアに基づくグループの定義は、異なる管理ガイドラインを確立するのに有用かもしれない。
慢性ITPを定義するカットオフ値は12か月への変更を検討すべきである。
考察と感想
NOPHOのスコアについて
NOPHOはNordic society Of Pediatric Hematology and Concologyの略のようですね。このグループが、ITPにおいて短期間で重大なイベントを起こさず寛解する症例の予測スコアを出していたようです↓↓
Edslev PW, Rosthøj S, Treutiger I, et al. A clinical score predicting a brief and uneventful course of newly diagnosed idiopathic thrombocytopenic purpura in children. Br J Haematol 2007;138:513–516.
- 急な発症(< 14日以内):5点
- 10歳未満:3点
- API (先行する疾患):2点
- 血小板数 < 10,000万/μL:2点
- 粘膜出血(wet purpura):1点
- 男児:1点
で、0〜4は可能性が低い;5〜9点は中等度;10〜14点は高い、と判断されるようですね。
頭蓋内出血(ICH)について
Intracranial hemorrhage developed in three children (0.2%). Two of them survived and the other one died. No other cause of death was reported. Therefore, the overall mortality rate in our population was 0.1%.
原著には上のように記載されています。
- 3/1418 = 0.21% [95%CI, 0.04–0.62%]
という推定でしょうか。詳しい経過が知りたかったですが、この論文で記載はなかったです。
まとめ
2009年にアルゼンチンから報告された研究です。
小児のITPにおいて頭蓋内出血が生じるリスクを推定していますが、0.21% [95%CI, 0.04–0.62%]となっております。
先行研究ともかねがね一致する内容と思います。
(2024/12/21 06:25:05時点 Amazon調べ-詳細)
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について