今回は、アメリカ編で行われたIVIG,と抗D免疫グロブリンの有効性を比較した研究を紹介しました。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
この研究では、新たにITPと診断され、血小板数が2万/μL未満のRh+である小児105例を対象に行われました。
RCTによって、抗D免疫グロブリン (抗D) が静脈内免疫グロブリン (IVIG) と同等に有効かどうかを決定する。
方法
適格患者に抗D免疫グロブリン 50μg/kg (抗D 50) 、 75μg/kg抗D (抗D 75) または0.8 g/kg IVIg (IVIg) を単回静脈内投与した。患者の治療反応と有害事象をモニターした。
結果
治療後24時間までに血小板数 > 2万/μLを達成した割合は以下の通りでした:
抗D-50 | 抗D-75 | IVIG | |
割合 | 50% | 72% | 77% |
一方で、ヘモグロビン濃度の変化は以下の通りでした:
抗D-50 | 抗D-75 | IVIG | |
低下 | 1.6 g/dL | 2.0 g/dL | 0.3 g/dL |
また、頭痛、発熱、悪寒といった副作用は抗D50群では最も少なかった。
結論
新たにITPと診断された小児において、抗Dの75μg/kg単回投与は、標準用量抗Dよりも迅速に、また許容できる安全性でIVIgと同様に効果的に血小板数を上昇させた。
考察と感想
ヘモグロビン 2.0 g/dLの低下を「許容できる」とするかはちょっと微妙なラインの気もします。特に、ITPによって重篤な出血のあるような症例では使いづらいのではないでしょうか。
まとめ
今回は、小児のITPにおいて、IVIG、Anti-Dを比較したRCTでした。
抗D免疫グロブリン 75μg/kg単回投与の血小板増加作用は、IVIGと比較してほぼ同じでしたが、ヘモグロビンの低下が大きかったようです。
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