今回は、小児ITP患者において、国内での診療パターンを分析して、IVIGとステロイドの有効性を比較検討した研究となります。
- 新規の小児ITPの治療の推移
- ステロイドよりIVIGを使用する例が増えている
- IVIGのほうが入院期間は短くできそうだが、コストは高く、再入院率低下は見込めない
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児の急性免疫性血小板減少症 (ITP) において、診療パターンと異なる治療方針の臨床的利点は、日本では不明のままである。
方法
日本の全国入院患者データベースを用いて、急性小児ITPの診療パターンにおける最近の傾向を分析した。
さらに、IPTWと操作変数法を用いて、免疫グロブリン (IVIG) とステロイドで治療された小児で、 6か月以内の再入院のリスク、総入院費用、および入院期間の長さを比較した。
結果
2010年から2014年にかけて、 IVIG使用の割合は43.4→66.0%に増加したが、コルチコステロイド使用および無治療・経過観察の割合はそれぞれ16.4→10%および28.6→14.3%に減少した。
IVIGとステロイド間で6か月再入院リスクはほとんど変わらなかった。
コステロイド群の総入院期間はIVIGよりも3.5日長かった(95%信頼区間、2.1~4.6日)が、総入院費用はコルチコステロイドよりもIVIGの方が大きかった(差額207,994円;95%信頼区間149,586円~280728円)。
結論
研究期間中、 IVIG使用の増加傾向が観察された。
総入院費用は、コルチコステロイド群よりIVIG群でかなり大きかったが、再入院リスクは両群で同様であった。
考察と感想
言われてみれば当たり前の結果ですが、IVIGのほうが血小板が急に上がる傾向にあるので、その分、早く退院できたのでしょう。一方で、IVIGは高額ですので、それだけコストは上昇したといったところです。
一方で、再入院率はほとんど変わらず、短期的なアウトカム以外でのIVIGの優位性ははっきりしないですね。
まとめ
今回は、小児のITPにおいて、診療パターンの変化と、ステロイド vs. IVIGの有効性を比較した研究になります。
国内では、ステロイドを使用する例は減っており、IVIGを好む医療者が増えているようです。
IVIGは短期的には入院日数を短縮させますが、医療コストは膨れ上がるのと、再入院のリスク減少効果はほとんどなかったようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています