- 便秘には水分摂取をしっかりしましょう
という指導もあるようです。基本的には脱水のないお子さんに水分摂取を励行しても、あまり効果がないようですが、ポリエチレングリコールを内服中のお子さんにはメリットがあるかもしれない研究がありました。
今回は、その研究をご紹介します。
- 小児の慢性便秘を対象に行われた研究
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ラクツロースまたはポリエチレングリコールを内服中の小児において、水分摂取量が排便の回数や性状の影響するか検討
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ポリエチレングリーコールを内服中の小児においてのみ、水分摂取量が多い時の方が、排便回数や性状が良好な傾向にあった
韓国からの報告です。
水分をしっかり摂取すると便秘は改善するのか?
研究の背景/目的
本研究の目的は,慢性便秘の小児における浸透圧性下剤(PEG 4000およびラクツロース)による治療の転帰に、水分摂取量がどの程度影響を及ぼすか評価することであった。
研究の方法
医療記録をレビューし, 以下の基準を満たす慢性便秘の27人の子供を登録した:
- 3か月以上の安定して維持投薬を受けている
- 比較された2つの期間の間に用量の変更又は薬物の変更がない
- 調査期間中に摂取量又は転帰に影響を及ぼすおそれのある臨床的事象が認められない
- 便通の回数、便の硬さ及び水分の摂取量を日誌に記載されている:
日記は一回の訪問につき25日以上に及んだ - 比較する2つの期間の間隔が3ヶ月未満であった
排便および便の硬さに関してスコアリングシステムを開発した。
同一患者について,良好な水分摂取期間のスコアを不良な水分摂取期間のスコアと比較した。
解析にはWilcoxon符号順位検定を用いた。
研究の結果
ポリエチレングリコール4000 (PEG 4000;14例)では,良好な水分摂取に関する排便スコアは21.43~30.00(中央値, 27.78)であった。
一方で, 水分摂取が不良な場合の排便スコアは19.00~30.00(中央値, 25.13; P=0.009)であった。
便の硬さについては,良好な水分摂取に関するスコアは11.79~20.00(中央値, 20.00)であったが, 水分摂取が不良な場合のスコアは11.00~25.00(中央値, 15.91;P=0.002)であった。
ラクツロース(13例)については,排便の二つのカテゴリーに関して統計学的な有意差はなかった。
結論
PEG 4000を既に服用している小児は,追加の水分摂取が依然として有益である。
考察と感想
少し補足してみようと思います。27人の小児が最終的に解析の対象となりました。
腸の動きに関しては、一日に1回以上の排便があれば1点。
便の性状に関しては、水様便は1点、泥状便は0.75点、通常の便は0.5、硬い便は0.25点
と記録して、30日で点数を換算しています。
水分摂取の目安ですが、
体重 | 水分摂取 |
15 kg | 500-600 mL |
20 kg | 700-800 mL |
25 kg | 800-900 mL |
30 kg | 1000 mL |
> 40kg | 1200-1500 mL |
と定義し、目安の20%未満を少ないグループに定義しています。
水分摂取の悪い時期と良い時期を比較したようです。
ポリエチレングリコールを投与された14名に関しては、以下の通りで改善傾向がありました:
水分摂取量 | 少ない | 多い |
排便回数のスコア | 25.13 (19.00-30.00) |
27.78 (21.43-30.00) |
便の性状のスコア | 15.91 (11.00-25.00) |
20.00 (11.79-20.00) |
ラクツロースのグループ(N=13)はどうでしょうか:
水分摂取量 | 少ない | 多い |
排便回数のスコア | 23.44 (12.86-28.00) |
24.55 (15.00-28.97) |
便の性状のスコア | 13.00 (6.43-17.79) |
13.93 (7.97-18.10) |
ほとんどスコアがかわていないようです。
まとめ
今回の研究は、ラクツロースまたはポリエチレングリコールを内服中の小児において、水分摂取量が排便の回数や性状の影響するか検討しています。
ポリエチレングリーコールを内服中の小児においてのみ、水分摂取量が多い時の方が、排便回数や性状が良好な傾向にあったようです。
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