前回は小児の肺炎における有効性を検討した系統的レビューとメタ解析をご紹介しました。
結局のところ行われた研究数が少なく、1本のRCTを紹介するのみに留まっていました。
小児の臨床研究は基本的に少ないため、成人領域でも類似のものがないか気になるところです。
そこで、成人においてのアンブロキソールの有効性を探したところ、メタ解析をした論文を1本認めたため、ご紹介させていただきます。
- 成人において、アンブロキソールは咽頭痛に有効かもしれない
今回のメタ解析は複数のRCTの結果を統合することに成功しています。
個々のRCTですと不確実性が多いのですが、様々な研究結果を集めて評価することで、より信頼度の高い結果を提示しています。
研究の方法
今回のメタ解析は、
- MEDLINE
- EMBASE
- Central
- Clinical Trials.gov
を使用して1966年〜2011年の対象となる研究(RCT)を検索しています。
MeSH-terms: [Ambroxol AND (pharyngitis OR tonsillitis OR rhinopharyngitis OR tonsillopharyngitis OR pharyngotonsillitis OR sore throat OR pharynx* OR tonsil*)].
咽頭炎において、アンブロキソールの有効性を検討したRCTを抽出し、メタ解析を行っています。咽頭痛の指標として、
- 咽頭痛の軽減(-1 = 完全に痛み軽減;-0.1 = 10%の咽頭痛軽減)
- 全体的な有効性:4点満点
メタ解析は固定効果(Fixed-effects)+Inverse variance weight(分散の逆数を重み付け)を使用してデータを統合しています。
研究結果と考察
5つのRCT、合計1722人の患者が対象となりました。
全ての研究はアンブロキソール vs. プラセボで有効性をしています。
研究の特徴は以下のテーブルになります(論文より拝借)
内服後180分以内の咽頭痛の減少率について
アンブロキソールとプラセボ内服後の咽頭痛の減少率ですが、
- アンブロキソール 20mg:37-42%
- アンブロキソール 30mg : 40-49%
- プラセボ:27-35%
となっています。
こちらがメタ解析のForest Plotになります。
プラセボ群と比較して、アンブロキソール 20mgは10%ほど、アンブロキソール 30mgは17%ほど痛みが軽減していました。
全体的な有効性の評価
全体的な有効性の評価ですが、アンブロキソール vs プラセボの有効性を感じた人の割合は、
- 1日目:69% vs. 53%
- 2日目:78% vs. 59%
- 3日目:83% vs. 67%
となっています。
考察と感想
今回の研究では(意外と!?)アンブロキソールが咽頭痛に効きそうという結果でした。
劇的に効くというわけではなさそうですが、かぜ薬のエビデンスが少ない中、有効性が検証された貴重な研究と思います。
気になるのは鎮痛剤との比較でしょうか。
個人的な話ですが、喉が痛ければ痛みどめ(アセトアミノフェン)を私は服用しますし、飲み物がのみづらければ冷たい飲み物を飲むようにしています。
この辺りと比較してどうか、純粋に興味があります。
成人のみで有効性が評価されているため、この結果を小児にまで一般化できるかは、私は慎重に考えています。
もちろん有効である可能性を頭ごなしに否定しているのではなく、成人には有効だったけれども、小児には効かないということもあり得るということです。
そういった不確実性を無視しない方が良いでしょう。
まとめ
成人での研究結果になりますが、咽頭炎に対してアンブロキソールは症状を和らげる効果があるのかもしれません。
(あまり期待はできないのですが)小児でも同様の研究が行われると良いなと感じています。
アンブロキソール(ムコソルバン®︎)は…
- 成人においては咽頭痛を和らげるかもしれない
- 痛み止めと比較してどうかはわからない
- 小児においての有効性は不明のまま…