稀ではあるものの、小児でも新型コロナウイルス感染で重症化して、小児集中治療室 (PICU) に入室した症例があるようです。
今回の研究では、2020年の3月14日〜4月3日にアメリカ・カナダの46のPICUに入室し48人の小児の横断調査になります。
この48人は、すべてアメリカでの症例で、アメリカの14のPICUに入室しています。
このうち、40人の小児 (83%) が既存の基礎疾患を有し、 35人 (73%) が呼吸器症状を呈し、 18人 (38%) が侵襲的な機械的人工換気を必要とし、院内死亡率は4.2%であったようです。
今回はこちらの論文を見ていきましょう。
- アメリカ・カナダのPICUに入室した小児48例の報告
- 多くは基礎疾患あり
- 挿管や気切が必要だったのは4割
- 死亡例は2名
アメリカとカナダからの報告
研究の概要
背景
新型コロナウイルス感染症の大流行は、成人において前例がないほどの重症例が出ています。入院症例においては、成人よりも小児の方が軽症例が多く、医療的な負担が少ないようですが、小児集中治療室 (PICU) に入室した症例を記述した報告は限られています。
この論文では、アメリカ・カナダのPICUにおける小児例の、症状、合併症、重症度、治療的介入、臨床的経過、および早期アウトカムに焦点を当てて、特徴を記載されています。
方法
この横断的研究では、 2020年3月14日〜4月3日の間に、北アメリカにある46のPICUに入院した新型コロナウイルス陽性の小児を調査しています。
PICUに入院した小児の入院前の特徴、臨床経過、さらに病院での転帰の情報が提供されています。
結果
PICUに入室した新型コロナウイルスは48例でした。
患者背景の特徴は以下の通りです:
- 男児:25人 (52%)
- 年齢:中央値 (範囲) は13歳 (4.2~16.6)
- 基礎疾患あり:40例 (83%)
- 呼吸器症状:35例 (73%)
侵襲的機械換気が必要だったのは、18例 (38%)です。
11人の患者 (23%) は、 2つ以上の臓器系の不全を示した。
体外式膜型人工肺が1例 (2%) 必要であった。
28人の患者 (61%) で新型コロナウイルスをターゲットにした治療が行われており、ヒドロキシクロロキンが最も一般的に使用されていたようですね(単独(11人)または併用(10人))。
追跡期間の終了時(4/10)に、 2人の患者 (4%) は死亡し、 15人 (31%) はまだ入院しており、 3人は換気補助を必要とし、 1人は人工心肺によるサポートを受けていました。
退院した患者のPICU入室期間は5日(3〜9日)、入院期間の中央値 (範囲) は7日 (4~13日) であった。
結論
この初期の報告では、北米のPICUにおける新型コロナウイルス感染の負担について述べています。
小児でも重症例がありますが、成人よりはるかに頻度が低いことが確認されています。
基礎疾患は小児において重要な因子であると思われます。
今回の予備調査は、今後の大規模で広範な研究のための重要な基盤となるでしょう。
感想と考察
アメリカのPICUからの報告ですね。重症例は少ないもののいるようで、特に基礎疾患のある小児は注意が必要そうですね。
治療に関しては、過去、中国の8例からも報告されているので、比較されると良いですね:
まとめ
今回は、アメリカ・カナダの小児における新型コロナウイルスの重症例を集積した研究です。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/22 02:10:52時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について