ワクチン接種と特定の病気のリスク上昇は、古くから研究されています。
例えば、小児においても、麻疹・風疹・おたふくかぜワクチンを接種後に、ITPのリスクが上昇すると言われていたようです。
一方で、これら生ワクチンを接種した場合と、これらのウイルスに感染した場合、どちらがITPの発症率は高いのか?という疑問に答えた系統レビューはありませんでした。
そこで、今回の研究が行われたようです。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
麻疹・ムンプス・風疹 (MMR) ワクチン後のITPの発生率を、(麻疹および風疹)に自然感染した場合に生じる発生率と比較し、その臨床経過と転帰、およびMMRワクチンを繰り返し接種した場合の再発リスクを決定すること。
方法
Ovid MEDLINEの書誌データベースを利用して、1950年から現在にかけて系統的レビューを行った。
著者らは、 ITPの発症前にMMRワクチン接種をした小児を報告した研究を選択した。
6か月以内のMMR関連血小板減少症、または血小板減少性紫斑による出血症状の出現や消退に関する同じ研究および他の研究からのデータを抽出した。
最後に、 MMRの初回または2回目接種後のITP再発のリスクを検討した
結果
12の研究に基づいて、 MMR関連ITPの発生率は10万ワクチン接種あたり0.087から4 (中央値2.6)例の範囲であった。
重篤な出血症状は稀であり、 MMR関連血小板減少症は93%の小児で診断から6か月以内に回復した。
ITP患者においてMMRワクチン接種は、初回接種・2回目接種を含めて、血小板減少症の再発につながらなかった。
結論
MMRに関連して生じるITPは非常に稀であり、基本的に自然治癒し、重症化することもない。
ITPに罹患した小児は、推奨される年齢でMMRワクチンを接種すべきである。
考察と感想
MMRワクチン接種後のITP発症率のデータが掲載されていました。
国 | 発生率 |
カナダ | 1/10万接種 |
スウェーデン | 2.7/10万接種 |
ドイツ | 0.2/10万接種 |
フィンランド | 3.33/10万接種 |
UK | 3.44/10万接種 |
フランス | 0.95/10万接種 |
デンマーク | 0.88/10万接種 |
UK | 3.1/10万接種 |
UK | 4/10万接種 |
ノルウェー | 3.33/10万接種 |
日本 | 0.087/10万接種 |
アメリカ | 2.5/10万接種 |
一方で、実際に麻疹や風疹に感染した場合のITPの発症率も記載されています:
国 | 感染症 | ITPの発生率 (分母は感染者数) |
アメリカ | 麻疹 | 33/10万 |
? | 風疹 | 6/10万 |
アメリカ | 風疹 | 1200/10万 |
日本 | 風疹 | 63/10万 |
ロタウイルスワクチンもそうですが、ワクチン接種後の腸重積のリスクと、実際にロタウイルスなど胃腸炎に罹患した後の腸重積のリスクでは、前者の方が低いという報告もあります。いくつかのシナリオを考えて、リスクを推定することは重要と思います。
まとめ
生ワクチン接種後のITPの発症率を検討した研究です。
麻疹・風疹・おたふくかぜのワクチンに関連して生じるITPは非常に稀です。
また麻疹・風疹に感染した後に、ITPを発症するリスクの方が遥かに高かったようです。
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