今回は子癇前症と幼児喘息のリスクの関連性を検討した研究を紹介します。
- 家族性因子や交絡因子を対処して解析
- 軽度・中等度ではなく重度の子癇前症が喘息と関連するというエビデンスが示唆されたようです。
Kristine Kjer Byberg, Cecilia Lundholm, Bronwyn K Brew, Gustaf Rejnö, Catarina Almqvist, Pre-eclampsia and risk of early-childhood asthma: a register study with sibling comparison and an exploration of intermediate variables, International Journal of Epidemiology, Volume 51, Issue 3, June 2022, Pages 749–758, https://doi.org/10.1093/ije/dyab204
2022年にIJEから公表されたようです。
子癇前症と幼児喘息のリスクの関連性:兄弟比較と中間変数の探索研究
研究の背景/目的
子癇前症が小児喘息、アレルギー性喘息および非アレルギー性喘息と関連するかどうかを、家族因子および中間変数を考慮しながら検討することを目的とし研究が行われた。
研究の方法
研究対象者は、スウェーデンの国民健康台帳から特定された2005~2012年に生まれた779,711人の子どもである(n=14 823/7410がそれぞれ軽度/中等度/重度の子癇前症に曝露された)。
Cox回帰を用いて,2歳前後での軽度・中等度・重度の子癇前症と喘息発症との関連を推定した。
Cox回帰は、兄弟比較を用いて家族性要因をコントロールし、その後、中間変数である帝王切開、未熟児、妊娠年齢が小さいことについて高リスクと低リスクで層別化した。
より確立された喘息の指標として、6年後のアレルギー性および非アレルギー性喘息有病率についてロジスティック回帰を用いた。
研究の結果
小児における喘息発症率は7.7%(n=60,239)であった。関連性は、2歳以上での軽度/中等度子癇前症および喘息の調整ハザード比(adjHR)1.11 [95%信頼区間(CI): 1.00, 1.24 ]から、2歳未満での重症子癇前症および喘息の adjHR 1.78 [95% CI: 1.64, 1.95 ]まで、さまざまであった。
兄弟姉妹の比較は、2歳未満での重症子癇前症と喘息の関連(adjHR 1.45、95%CI:1.10、1.90)以外のほとんどの推定値を減弱させ、これは中間リスクの層別化でも残存していた。
軽度・中等度および重度の子癇前症は、6歳時点での非アレルギー性(アレルギー性ではない)喘息の有病率と関連し、調整オッズ比(adjOR)1.17 [95%CI:1.00、1.36]およびadjOR 1.51 [95%CI:1.23、1.84]とそれぞれ算出された。
結論
家族性因子や交絡因子にかかわらず、軽度・中等度ではなく重度の子癇前症が喘息と関連するというエビデンスを見いだした。
考察と感想
重症子癇前症への曝露は小児早期発症喘息(2歳未満)と関連し、その関連は家族性交絡、分娩様式、妊娠年齢、出生体重では説明できない結果でした。つまり、重症子癇前症と早期発症喘息の関連性は、過去の研究とも比較しても交絡の対処が様々な形で対処されていることから、より因果的な関係が示唆されるのかもしれません。
まとめ
家族性因子や交絡因子を対処して解析したところ、軽度・中等度ではなく重度の子癇前症が喘息と関連するというエビデンスが示唆されたようです。
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