これまで数多くのプロバイオティクスの研究がされてきましたが、乳酸菌(Lactobacillus GG)やSaccharomyces boulardiiなどが中心でした。
有効性が認められた研究も多いですが、ロタウイルス胃腸炎でのものが多く、他の病原体でははっきりしないものもあります。
今回の研究は、インド北部においてプロバイオティクスが有効であるかを検証しています。
研究の方法
今回の研究は、オープンラベルでランダム化比較試験(RCT)がされました。行われたのは、
- 2010〜2012年
- 6ヶ月〜5歳
- 7日以内の下痢で救急外来に受診
- 慢性疾患なし
- 抗菌薬の先行投与なし
を主な研究対象にしています。治療は、
- 乳酸菌:Lactobacillus GG
- プラセボ
のいずれかをランダムに割付ています。乳酸菌製剤は、100億CFU/日を5日間投与しています。
アウトカムについて
- 下痢の期間
- 下痢の頻度の変化(Likert Scaleを使用*)
*1 = 正常, 2 = 軟便, 3 = やや水様, 4 = 水様便
を中心に検討しています。
研究の結果と考察
最終的200人が参加し、175人の小児のフォローアップが完了しました。
研究に参加した患者の特徴は以下の通りです(原著より拝借):
コントロール群の方が、入院の割合が多く、下痢の期間が若干長い点が少し気になりました。
それ以外の項目は、ほぼバランスが取れています。
下痢の期間
こちらのKaplan Meier生存曲線では、下痢の期間を比較しています。(原著より拝借)
乳酸菌を使用したグループの方が、下痢の期間が短くなっています。
実際にどのくらい期間が短縮したかはtable 2に書かれていました。(原著より拝借)
およそ半日〜1日の間くらいでしょうか。
ロタウイルス陽性の子供の方が、下痢の期間の短縮効果はより強そうですね。
便の性状の改善
便の性状が改善するまでの期間も、乳酸菌を使用したグループの方が若干良さそうでした。(原著より拝借)
時間で見ると、6時間ほど改善が早いということになりそうですね。(原著より拝借)
その他
その他のアウトカムは以下の通りです:(原著より拝借)
どのアウトカムを見ても、全体的に乳酸菌グループの方が良さそうですね。
統計学的な有意差が出ているのは、
- 下痢の回数
- ロタウイルス陰性の方の下痢回数
あたりでしょうか。
感想とまとめ
今回の研究では、乳酸菌のプロバイオティクスを使用した方が、1日ほどですが下痢の期間が短くなっていました。
ロタウイルス感染があっても、なくても同じような傾向でしたが、ロタウイルス感染者の方が短縮効果は大きいのかもしれません。
今回の研究では、胃腸炎患者の25%ほどがロタウイルスが原因です。
迅速検査で陽性者と陰性者に解析をきっちり分けて行なっている点も、非常に好感が持てました。
これまでの研究結果を思い返しても、ロタウイルス患者の方が乳酸菌の効果が強く出ている気がします。
胃腸炎による下痢は、普段の栄養状態やその他の衛生環境にも左右されますのでなんともいえませんが、研究結果によるばらつきが出ているのも、病原体の頻度の違いが影響しているのかもしれないですね。
まとめ
今回の研究では、乳酸菌製剤は5歳未満のインドの小児の下痢において、1日程度期間を短縮される効果がありました。
ロタウイルス感染をしている小児の方が、下痢を短縮させる期間は強そうな印象を受けています。
同じような結果が他の地域でも認められるか、注意して文献をみていこうと思います。