今回の研究は韓国で行われたプロバイオティクス(整腸剤)の研究をご紹介します。
Park MS, et al. The Efficacy of Bifidobacterium longum BORI and Lactobacillus acidophilus AD031 Probiotic Treatment in Infants with Rotavirus Infection
これまでご紹介してきた研究とやや趣が異なり、ユニークな点としては、
- Bifidobacterium Longumを使用してる
- ロタウイルスに感染した小児に限定しているという点です。
Bifidobacterium Longumはいわゆるビフィズス菌のようですね(以降、ビフィズス菌)。
この研究ではLactobacillus+ビフィズス菌のコンビネーションがどのくらい小児の下痢に有効かを見ています。
研究の方法について
今回の研究は韓国のソウルで行われた二重盲検化ランダム化比較試験で、
- 9-16ヶ月の乳幼児
- ロタウイルスに感染して入院が必要
を対象に行われています。治療は、
- Lactobacillus+ビフィズス菌
- プラセボ
のいずれかをランダムに割付け、3日間ほど治療しています。
研究結果と考察
合計57名の患者が研究に参加し、
- Lactobacillus(20億)+ビフィズス菌(200億): 29人
- プラセボ:28人
でした。
アウトカムについて
アウトカムですが、以下の通りでした:
プロバイオティクス | あり | なし |
下痢の期間 | 4.38 | 5.61 |
発熱の期間 | 3.66 | 4.32 |
嘔吐回数 | 1.55 | 1.82 |
下痢の回数/日 | 2.38 | 2.64 |
全体的にプロバイオティクスを使用したグループの方が、
- 下痢の期間・回数は少ない
- 発熱期間もやや短い
- 嘔吐回数がやや少ない
といった傾向にありました。この中で統計学的な有意差を認めたのは下痢の期間のみです。今回の研究では1日ちょっとほど短くなっています。
プロバイオティクスの量と効果:著者らの記載から
プロバイオティクスは種類と量が大事なようで、例えばロタウイルス胃腸炎に他の種類の乳酸菌(Lactobacillus. rhamnosusなど)が使用され、有効性を認めた研究もあります。
また、量も重要で、過去に1000万 CFU/dayでは不十分で、100億CFU/dayに増量したところ有効であった研究もあるようです。
このため、L. rhamnosusでは最低でも60億CFU/day以上の濃度で使用した方が良いのでは、と言われているようです。
感想と考察
今回の結果はロタウイルスに罹患した1歳前後の小児が対象でしたが、解釈はしやすいとも追いました。
「胃腸炎」と一言ですが、様々な病原体が原因になるため、解釈に少し困ることがあります。
例えば、とあるウイルスには効いて、別のウイルスには効かないという現象も考えられるわけです。このことを治療効果の修飾(effect modification)と言ったりします。
治療効果の修飾(effect modification)の難しさとして、本当はロタウイルスには有効だけれども、母集団全体としては有効性が証明できず「プロバイオティクスは小児の胃腸炎で無効だから使用すべきでない」とややミスリーディングな結論を出されてしまうことがあります。
今回の研究は予めロタウイルス感染のみに絞られ、使用されたプロバイオティクスの量と種類を明確に記載されているため、解釈はしやすいと思いました。
まとめ
今回の研究は、韓国(ソウル)における1歳前後の小児のロタウイルス感染症で入院した小児に対して、プロバイオティクス(Lactobacillus+ビフィズス菌)の治療は下痢の期間を1日ほど短くする効果があるかもしれません。
入院患者のみですので、外来患者にまで一般化は難しいのと、他の先進国でも類似の結果がないかを今後も追跡していこうと思います。