今回の研究はウガンダで行われたプロバイオティクス(整腸剤)の有効性を検証した研究になります。
貧困問題のある国々では子供たちの栄養状態が悪く、下痢などをきっかけに全身状態が悪化し、入院が必要になったり、場合によっては死亡してしまうこともあります。
先進国ではあまり想像しづらいかもしれませんが、途上国では毎年多くのお子さんが胃腸炎をはじめとした感染症で命を落としています。
近年、メタ解析などで、乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスが下痢の期間を短縮するかもしれない、と報告されています。
これらの研究に途上国のデータも含まれてはいるのですが、栄養状態が比較的良好な患者がほとんどです。
このため、栄養状態が悪い小児が下痢を起こした時に、プロバイオティクスが有効であるか、今回の研究は検証しています。
研究の方法
ウガンダで重度な栄養失調のあるお子さんが、下痢を起こした入院したケースを対象に二重盲検ランダム化比較試験が行われました。対象となったのは、
- 6〜59ヶ月の小児
- 栄養状態が悪く入院となった小児
- 呼吸不全やショック状態ではない
- 先天性疾患や悪性疾患はない
を対象としています。
治療は、
- Lactobacilus rhamnosus
- Bifidobacterium animalis
を100億 CFUを8週〜12週かけて投与しています。プラセボ群にはプロバイオティクスを使用していませんが、そのほかの治療(例えば経腸栄養剤など)は同じです。
アウトカムについて
この研究のアウトカムは、
- 下痢の期間(日数):入院中
- 外来での下痢の期間
- 重症な下痢:Vesikari scoreで計測
- 肺炎
などが計測されています。
研究の結果と考察
最終的に400名が研究に参加し、200人がプロバイオティクスを、200人がプラセボを投与されました。
年齢・性別・体重など、2つのグループはほぼ同等でした。
プラセボグループの方が、母の教育歴が低い傾向にありました。
少し驚いたのが、母のHIV陽性の割合が34%、子供のHIV陽性の確率が13%-15%です。
下痢の期間について
下痢の期間ですが、入院と外来では以下のようになりました。
Probiotics | あり | なし |
入院 | 6.9日 | 6.5日 |
外来 | 6.0日 | 8.5日 |
入院中の下痢の期間はプロバイオティクスの治療があってもなくても、下痢の期間は変わりませんでした。
一方で、外来での治療に移行してからの下痢の期間はプロバイオティクスを使用した方が2.5日ほど短くなり、こちらは統計学的な有意差があります。
個人的な感想ですが、入院期間中と外来期間中の下痢は足して評価した方が良いと思いました。
というのも、多少の下痢は続いていても、全身状態が改善すれば退院となるため、入院期間のアウトカムは打ち切り(censoring)となります。
つまり、本当は10日以上持続していた下痢も、入院期間だけに限定すると6-7日と計算せざるを得なくなってしまうのです。
一方で、外来でもしっかりと下痢の期間を追跡しています。
これであれば、結局はどのくらい下痢の期間がトータルで持続したかが重要になるため、わざわざ外来 vs 入院と2分する意味が薄れてしまいます。
そのほかのアウトカムについて
- 下痢の重症度
- 肺炎の合併症
- 体重の回復
- 発熱期間
- 嘔吐回数
- 入院日数
などはすべて2つのグループはほぼ同じで、統計学的な有意差はありませんでした。
まとめ
今回の研究がウガンダの栄養失調のある小児の下痢に、乳酸菌とビフィズス菌の有効性を検証していました。
乳酸菌とビフィズス菌を使用しても、入院期間中に有効性は確認されませんでしたが、退院後の下痢の期間を換算すると数日ほど短くなるかもしれません。