今回はこちらの論文をピックアップしました。2歳未満の小児を対象に行われた、プロバイオティクスの有効性を検証した研究になります。
過去のプロバイオティクスの研究を見ると、小児全体が対象であったり、1歳未満は対象外であったりと、研究によって年齢範囲が異なりました。
小児で行われる臨床試験の問題として、特に乳幼児の研究対象外であったり、乳幼児の数が相対的に少なくなってしまうケースもあります。
今回の研究は2歳未満(24ヶ月未満)と厳密に定義され、プロバイオティクスが小児の胃腸炎に有効かを検討しています。
研究の方法
今回の研究は、アルゼンチンで行われた研究で、
- 生後 3ヶ月〜24ヶ月
- 下痢が1日3回以上で外来受診
- 下痢の持続期間が1日以上、7日未満
- 慢性疾患なし
- 栄養不良なし
- 重篤な疾患なし
を対象に行われています。治療は、経口補水液に
- プロバイオティクス:Saccharomyces boulgardii
- プラセボ
を加えて、6日間投与しています。
アウトカム
研究のアウトカムは、
- 治療4&7日後の下痢の回数
- 7日以上持続した下痢の回数
- 下痢の期間
などが対象になっています。
研究結果と考察
最終的に88人が解析対象となり、
- プロバイオティクス:44人
- プラセボ(偽薬):44人
でした。
排便回数
排便回数の経過は以下の通りです。
プロバイオティクス | あり N = 44 |
なし N = 44 |
P-value |
0日 | 4.91 (1.78) |
5.45 (1.44) |
0.117 |
4日 | 3.48 (1.82) |
2.5 (1.47) |
< 0.001 |
7日 | 2.45 (1.28) |
1.55 (0.95) |
0.007 |
プロバイオティクスを使用してグループの方が、下痢の回数は1回ほど少なくなっていますね。
下痢の有無
下痢の有無を経過で見てみましょう。
プロバイオティクス | あり N = 44 |
なし N = 44 |
RR |
4日 | 22 (50.0%) |
30 (68.2%) |
0.73 (0.51, 1.04) |
7日 | 9 (20.4%) |
23 (52.2%) |
0.39 (0.20, 0.74) |
プロバイオティクスを内服していたグループの方が、下痢が持続する可能性は低くなっています。例えば4日目で27% (1-0.73)、7日目で61% (1 – 0.39)ほど下痢が減少しています。
下痢の期間について
下痢の期間(平均)は以下の通りでした:
- プロバイオティクス:6.16日(SD, 3.2)
- プラセボ:4.70日 (SD, 1.94)
と、プロバイオティクスを使用したグループの方が1.5日ほど短かったです。
考察と感想
2歳未満の外来患者に限定している点が、これまで紹介してきた論文との違いと思いました。
小児科外来に受診する下痢の患者さんは、確かに乳幼児が圧倒的に多く、多くは2歳未満です。
入院する例も多くなく、外来の治療で軽快してしまうお子さんがほとんどですので、実臨床に即した良い研究だと思いました。
当然ながらいくつか欠点もあります。
外来であるため再診はそれほど綿密にはできない点です。
今回の研究ですと、4日目ど7日目に再診しているため、その間の情報はわかりません。
あとは、下痢の病原体がそこまで詳しくみていない点でしょうか。
2006年以前に行われた研究ですので、おそらくロタウイルスが中心と思われますが、精査されていないため、なんとも言えません。
現代ではロタウイルスワクチンが普及していますし、例えば日本とアルゼンチンでは小児の周りの環境、小児の腸内細菌叢も異なるので、一般化はより慎重にならざるを得ないでしょう。
まとめ
今回の研究は、アルゼンチンで3ヶ月〜2歳の外来患者を対象に行われました。
プロバイオティクス(S. boulardii)は小児の下痢の回数を1回ほど減らし、下痢の期間を1.5日ほど短縮させる効果がありました。
とはいえ、日本の小児科外来へ一般化できるかは、やや慎重でいます。