ヨーグルトなどに含まれるプロバイオティクスが、消化管の疾患に有効であると以前から指摘されて、1960年代から研究が行われています。
これまでによく使用されてきたプロバイオティクスは、
- Lactobacillus casei strain GG
- Lactobacillus reuteri
- Lactovacillus acidophilus
などが中心、これ以外ですと
- Bifidobacterium bifidum
- Streptococcus thermophilus
あたりも研究されています。
Lactobacillus paracasei ST11という新しい菌株が、母乳栄養を受けている小児から検出されていますが、この菌株が小児の下痢に有効かは検証されたことがありませんでした。
そこで、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究は4ヶ月〜24ヶ月の小児を対象に、2001-2002年にかけてバングラディッシュで行われたランダム化比較研究です。対象となったのは、
- 下痢が4回以上
- 発症後48時間以内
- 低栄養なし
- 血便なし
- 慢性疾患なし
などに該当する入院患者です。治療は、
- Lactobacillus paracasei ST11
- プラセボ
のいずれかを割り当てて、5日間投与しています。
アウトカムは、
- 下痢の期間
- 排便の回数
- 経口補水の量
などを設定しています。
研究結果と考察
最終的に230人の患者が参加し、115人ずつプロバイオティクス or プラセボを投与されました。患者背景の特徴ですが、平均で
- 月齢 10ヶ月
- 体重 7.7 kg
- 治療前の下痢の回数 14回
- ロタウイルスが50%前後
となっています。
アウトカムについて
下痢の期間、下痢の軽快率を見ると、
プロバイオティクス | あり (N = 115) |
なし (N = 115) |
下痢の期間 | 90.4 h | 94.2 h |
軽快率 | 81 | 73 |
とほぼ同等の結果でした。
かつての研究では、ロタウイルス胃腸炎の小児に限っては有効性を認めることがありましたが、どうでしょうか。
プロバイオティクス | あり (N = 75) |
なし (N = 65) |
下痢の期間 | 94.0 h | 95.0 h |
軽快率 | 56 (75%) |
45 (69%) |
確かにプロバイオティクスを使用した方が、若干ですが良い印象もありますが、ほぼ同等の結果です。
ロタウイルス以外に患者を絞ると以下のようになります。
プロバイオティクス | あり (N = 27) |
なし (N = 36) |
下痢の期間 | 77.0 h | 99.0 h |
軽快率 | 19 (70.4%) |
17 (47.2%) |
この集団においては、プロバイオティクスを使用した方が下痢の期間や軽快率が高くなっています。
考察と感想
最初に説明したように、これまでの研究結果でプロバイオティクスが有効だったのは、ロタウイルスを対象にした研究がほとんどです。よく使用されてきたプロバイオティクスは、
- Lactobacillus casei strain GG
- Lactobacillus reuteri
- Lactovacillus acidophilus
- Bifidobacterium bifidum
- Streptococcus thermophilus
あたりで、今回の研究とは異なるプロバイオティクスです。
今回の研究では、
- Lactobacillus paracasei ST11
という菌株です。抗菌薬といっても、ペニシリン系とアミノグリコシド系で随分と異なるように、ひょっとしたらプロバイオティクスでも菌株によって有効性や対象となる疾患が異なるのかもしれません。
まとめ
今回の研究において、Lactobacillus paracasei ST11はロタウイルス胃腸炎には有効性が確認できませんでしたが、非ロタウイルス生胃腸炎には下痢の期間を1日ほど短くする効果があるのかもしれません。
この菌株の使用は今回の研究が初めてのようなので、今後に類似の研究が行われるか、注意深く見ていこうと思います。