今回はこちらの雑誌をピックアップしました。
Bifilac®︎はインドなどを中心に販売されているプロバイオティクスで、具体的には
- Clostridium Butyrcum: 200万
- Bacillus Mesentericus: 100万
- Strep Faeecalis: 3000万
- Lactobacillus Sporegens: 5000万
が入っているようです。
これまでの研究でプロバイオティクスが有効だったのは、
- ロタウイルス感染症
- Lactobacillus GG または B. bifidum
が中心でした。使われている菌株が異なるため、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究は二重盲検ランダム化比較試験(RCT)がインドで行われました。対象となったのは、
- 3ヶ月〜3歳
- ロタウイルス胃腸炎
- 下痢症状は3日以下
- 電解質異常、吸収不良、他の感染症なし
など該当した方に絞っています。治療は、
- Bifilacを1日3回ORSに混ぜる
- Placeboを1日3回ORSに混ぜる
のいずれかをランダムに割付ています。(*Placeboに何を使用したのかは、詳細な記載が見当たりませんでした)
アウトカムは、
- 下痢の回数
- 下痢の期間
などを計測しています。
研究結果と考察
最終的に76人の小児が解析対象となり、内訳は
- Bifilacは39人
- プラセボは37人
でした。
下痢の頻度について
下痢の頻度をみた表は以下の通りです(原著より拝借)
やや見辛いですが、治療開始3〜5日目くらいに、Bifilacを使用したグループの方が下痢の頻度が1〜2回ほど少なくなっている印象です。
私の方でもデータを使用してグラフを記載してみました。
下痢の期間について
下痢の期間は以下の通りでした
Bifilac | Placebo | |
期間, day (SD) |
4.35 (1.25) |
5.45 (1.69) |
プロバイオティクスを使用したグループの方が、約1日ほど下痢の期間が短くなっています。
退院時の便検査
退院時にロタウイルス検査をしていますが、結果は以下の通りでした。
Bifilac N = 39 |
Placebo N = 37 |
|
検査陽性, N (%) |
2 (5%) |
9 (24%) |
退院時にロタウイルスの抗原検査で陽性となる割合は、プラセボの方が約5倍ほど高そうですね。著者らは、便からの排泄期間が短くなることを示唆したかったものと思います。
考察と感想
恥ずかしながら、Bifilacという製品を初めて知りました。
あまり詳しいことはわからないのですが、インドで発売されているこの商品、日本の製薬企業も関わっているのかもしれませんね(リンク)。
今回の研究がロタウイルス胃腸炎 + 入院患者と限定されています。
過去の研究と同じように、下痢の回数、期間ともに改善効果が示唆されています。
一方で、その他の病原体や外来患者についてはこの研究だけでははっきりとは分からないです。
もちろん有効である可能性もあると思いますが、入院するほど重症でないお子さん、ロタウイルス胃腸炎以外のお子さん(例、ノロウイルスなど)の検証も追加で必要と思われます。
まとめ
今回はインドの3ヶ月〜3歳の小児のロタウイルス胃腸炎入院患者を対象に、プロバイオティクス(Bifilac)の有効性を検証しています。
下痢の期間は1日ほど短くなり、内服後数日で下痢の回数が1ー2回ほど減少しています。
ロタウイルス以外の感染症、外来患者への外的妥当性については、追加で検証が必要と考えています。