今回はイタリアで行われたプロバイオティクスと小児の下痢の研究結果を紹介します。
ロタウイルスワクチンが普及するまでは、下痢は小児科にとっても脅威でした。例えば、アメリカでは
- 2100万〜3700万人が下痢に罹患し
- 200〜400万人の小児が外来受診し、
- 20万人ほどが入院しています。
下痢患者の10%ほどが外来受診し、その10%(全体の1%)ほどが入院しているといったところでしょうか。
現在はロタウイルスワクチンが普及していますが、この研究が行われた時期(1990年代)はロタリックスやロタテックはありませんでした。
このため、下痢の期間を減らす、重傷を予防できるプロバイオティクスには大きな期待が寄せられていました。
今回は、こちらのイタリアで行われた多施設共同のRCTを紹介します。
研究の方法
今回はイタリアの家庭医のクリニック3箇所で、
- 3ヶ月〜36ヶ月
- 1995〜1996年
- 48時間以内の下痢で受診
- 慢性疾患なし
などを対象に研究が行われています。
治療は、
- プロバイオティクス:Lactobacillus casei strain GG: 3 x 10^9
- コントロール
のいずれかをランダムに割り当てています。
治療は5日間行っています。
アウトカムについては、
- 下痢の期間
- ロタウイルスの排泄期間
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に100人が解析の対象となり、
- プロバイオティクス(LGG):52人
- コントロール:48人
です。患者背景として、月齢は20ヶ月ほど、男女比はほぼ1:1でした。
下痢の期間について
下痢の期間を示した図は以下のようになります(論文より拝借)
全ての患者、ロタウイルス陽性・陰性に分けた場合も、いずれも下痢の期間が2−3日ほど短くなっています。
ロタウイルスの排泄について
ロタウイルスに感染した患者は61名いましたが、この小児が治療を開始して6日後のロタウイルスの排泄率を見ています。(図は論文より拝借)
図からも明らかなように、プロバイオティクスを使用したグループは高率で陰性になり、コントロールは効率で陽性の低いのでままでした。
考察と感想
今回の研究では、ロタウイルスの有無とは関係なく、プロバイオティクス(L. casei GG)は小児の下痢の期間を短縮させていました。
外来ベースで行われた研究ですので、より小児科の臨床現場に近い結果と思います。
下痢の期間が短縮するのは既報の通りですが、ウイルスの排泄率を下げる効果もあるのかもしれませんね。知っていて損はないのかもしれません。
ですが、実臨床ではロタウイルスの検査をしたり、便の再検査をするようなこともしませんので(時々、保護者からお願いされることもありますが)、この点は注意してくださいね。
まとめ
今回の研究では、ロタウイルスの有無とは関係なく、プロバイオティクス(L. casei GG)は小児の下痢の期間を短縮させ、6日後の便へのロタウイルスの排泄率も低下させていました。