プロバイオティクスと聞くと、乳酸菌、ビフィズス菌あたりを想像する方が多いと思います。私もそうです。
一方で、Saccharomyces(サッケロミセス)という菌があり、酵母としてビールやパンなどに使用されているようです。
このなかで、Saccharomyces boulardiiという菌株は、医薬品として使用されているようです。
菌ではありますが病原性はなく、胃酸に耐えることができるため、整腸剤として使用されることもあるようです。
しかし、小児の下痢への有効性は不確かであるため、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究はパキスタンで行われたランダム化比較研究で、
- 6ヶ月〜5歳
- 14日以内の下痢
- 入院治療が必要
- 重度な脱水なし
- 慢性疾患なし
を主な研究の対象としています。治療は、
- Saccharomyces boulardii
- 乳酸を産生する菌(= lactic acid producing probiotics(乳酸菌のこと?)
のいずれかのプロバイオティクスをランダムで割り付けられています。
-
- プロバイオティクスは1日2回投与で、さらに経口補水液と抗菌薬(セフトリアキソン)が投与されました。
アウトカムについて
アウトカムは、下痢の頻度をみています(おそらく5日後)
研究の結果と考察
合計で200人が対象となり、それぞれの治療グループに100人ずつ割り当てられました。この集団の特徴として、
- 6割は3歳以下
- およそ半分が男児
となっています。
有効性について
何をもって有効と判断したかは、不明確ですが、Saccharomyces boulardiiを使用したグループのほうが軽快率が高かったようです。
治療前の下痢の期間で層別化
治療前の下痢の期間で層別化しています。おそらく著者らは、治療前の下痢の期間がプロバイオティクスの効果を修飾していると判断したのでしょう(このことをeffect modificationといいます)。
治療前の下痢の期間が1週間より長いほうが、Saccharomyces boulardiiの有効性がはっきりとしていました。
考察と感想
結果はさておいて、著者らの記述方法にやや難があり、解釈がより難しく感じました。
少し列挙しますと、
- 盲検化の有無の記載がない
- Lactic acid producing probioticsとは具体的に何か?
- 具体的な菌株の提示がない
- アウトカムの評価がいつされたのか明記されていない
- なにをもって有効性と判断したか、はっきりしない
- 他のアウトカムも使えるのでは?(入院期間など)
など、様々な疑問点が湧いてきました。
さらに、入院患者全例に抗菌薬が使用されており、この場合、プロバイオティクスが
- 抗菌薬による下痢を予防したのか
- 入院の原因となった下痢を短縮したのか
の区別ができなくなっています。
100人 vs 100人の臨床研究ですので、それなりの手間と時間はかけているのですが、研究のストラクチャーがよくないため、明確な結論が導き出せず、やや勿体無いとRCTと感じました。
まとめ
今回の研究は、5歳以下の小児を対象に、プロバイオティクスの違いによって、下痢の改善効果が異なるかを検証しています。
Saccharomycesのほうが成績がよさそうにみえますが、研究のデザインの評価に必要な情報が不十分で、この研究からなにか結論を導き出すのは難しいと思いました。