ロタウイルスワクチンが出現するまで、小児科のメジャーな入院の1つとして胃腸炎がありました。
過去の報告によると、胃腸炎による入院は全体の5%〜20%ほどを占めていたようです。
このため、プロバイオティクスの有効性は、主にロタウイルス胃腸炎を対象に行われてきた歴史があります。
一方で、ロタウイルス感染以外が原因の場合、有効性の検証が不十分であるケースが多々みられたので、今回の研究ではロタウイルスあり/なしを検査しながら行われたようです。
研究の方法
ヨーロッパにおいて、多施設共同で、ランダム化比較試験がされました。対象となった患者は、
- 1ヶ月〜3歳
- 下痢の期間:1〜5日
- 慢性疾患なし
などです。治療は、
- Lactobacillus rhamnosus GG (ATCC53103):10^10 CFU
- プラセボ
を経口補水液に混ぜて投与されています。さらに便培養も行い、下痢の起因菌・ウイルスの特定をしています。
アウトカムは、
- 治療の失敗率
- 下痢の期間
- 体重の変化
- 7日以上の下痢
- 入院日数
などを指標にしていました。
研究結果と考察
最終的に287人の患者が対象となり、
- プロバイオティクス:140人
- プラセボ:147人
の内訳です。月齢は平均で12ヶ月、男女比は男児が6割とやや多かったです。
ロタウイルスが35%ほど、原因不明が35%ほど、残りがカンピロバクターなど細菌が検出されています。
アウトカムについて
アウトカムは以下のようになります
プロバイオティクス | なし | あり |
治療の失敗 | 7.8% | 8.1% |
経口補水量 | 1050ml (672) |
1194ml (948) |
下痢の期間(治療後) | 71.9h (35.8) |
58.3h (27.6) |
入院期間 | 96.3h (21.4) |
78.8h (22.2) |
となっています。
治療の失敗率は両者であまり差はなく、補水量もプロバイオティクスの方が高かったですが、統計学的な有意差はありません。
原因により分けた場合
胃腸炎の原因により分類した場合の結果を見てみましょう。
ロタウイルスのみは以下:
プロバイオティクス | なし | あり |
下痢の期間(治療後) | 76.6h (41.6) |
56.2h (16.9) |
過去の研究と同じく、ロタウイルス胃腸炎に呈すると、有効性はありそうです。
サルモネラやカンピロバクターなど、細菌性腸炎の場合はどうでしょうか:
プロバイオティクス | なし | あり |
下痢の期間(治療後) | 72.0h (32.4) |
73.3h (29.3) |
下痢の期間はほぼ同じです。細菌性腸炎の場合、有効性を証明することはできませんでした。
ロタでもない、細菌の件revalence 出もない場合はどうでしょうか:
プロバイオティクス | なし | あり |
下痢の期間(治療後) | 64.2h (30.5) |
53.2h (32.4) |
下痢の期間は、半日ほどですが、プロバイオティクスを使用したグループの方が短くなっています。
感想と考察
Lactobacillus GGは、ロタウイルス胃腸炎には有効そうな印象ですが、細菌性腸炎には有効性は認められなかったですね。
一方で、細菌もロタウイルスも検出されなかった場合(おそらく検査できなかったウイルスでしょうが)は、有効である可能性があります。
特にロタウイルス胃腸炎では下痢の期間、入院日数が1日ほど短縮しています。これは過去の研究とも同様の結果と言えます。
一方で、他のウイルスの場合は、おそらく半日ほどの短縮効果ですし、細菌性腸炎については短縮していません。
胃腸炎と一言で言っても、わかったような、わからないような感じですね。
原因となった病原体によってプロバイオティクスの有効性が異なりますので、この点は常に注意が必要と言えそうです。つまり、簡単に「胃腸炎に有効」と一般化してしまうのではなく、「ロタウイルス性胃腸炎に、プロバイオティクスであるLactobacillus GGは、下痢の期間を1日ほど短縮させる効果がある」とある程度、いろんな情報を捨てずに記載することも重要なのかもしれませんね。
まとめ
今回の研究では、ロタウイルス性胃腸炎に、Lactobacillus GGは、下痢の期間を1日ほど短縮させる効果がありました。
また、ロタ以外のウイルス性胃腸炎の場合は、半日ほどの効果です。
一方で、細菌性腸炎の場合は有効性は認められませんでした。
後者2つに関しては、雑多な細菌・ウイルスが混在しているので、さらなる研究が必要でしょう。