プロバイオティクスについてですが、基本的には安全な薬と考えています。
一方で、免疫不全の方、集中治療中の方、消化管術後に内服した場合などに、菌血症など重篤な合併症の報告例が複数あります。
これら症例報告だけでなく、もう少し大きな集団として検討した研究がフィンランドから発表されていたので、こちらで紹介します。
- プロバイオティクスはヨーグルトなどの乳製品や整腸剤に含まれる
- 基本的には安全であるが、一部の方(免疫不全など)は注意が必要
- プロバイオティクスによる菌血症の頻度は年0.3/10万人と極めてまれ
1990年にフィンランドでL. rhamnosus GGが乳製品で使用されるようになり、乳製品の消費量も急速の拡大したようです。この時期からの、L. rhamonosus GGによる菌血症などを把握することで、消費量の増大が副作用の増加につながっていないかを検討しています。
Minna K. Salminen, et al. Lactobacillus Bacteremia during a Rapid Increase in Probiotic Use of Lactobacillus rhamnosus GG in Finland. Clinical Infectious Diseases, Volume 35, Issue 10, 15 November 2002, Pages 1155–1160
研究の結果
対象となったのは、
- ヘルシンキ大学病院の症例(1990-2000):22例
- フィンランド全体の症例 (1995-2000):39例
となっています。1995年にフィンランド全体で、血液培養陽性例の報告が義務付けられたため、このような調査期間になっているようです。
1990年からLactobacillusの使用量がフィンランドでは上昇したようです。
この間にLactobacillus rhamnosus GGの消費量は90年には< 1L/person/yearだったのが、95年に3L/person/year、2000年に6L/person/yearまで増加していますが、Lactobacillusによる血液培養陽性例は増えていないです。
現に、血液培養陽性の報告例は0.1〜0.3%くらいの割合にとどまっています。
フィンランド全土の人口レベルで換算すると、1年あたり、0.29人/10万人の割合でLactobacillusによる菌血症が発症している換算になるようです。
一方で、少ないながらもLactobacillus rhamnosus GGによる菌血症は数例程度生じています。特に基礎疾患(免疫抑制状態)のある方には注意は必要かと思います。
感想と考察
北欧諸国は国全土のレベルのデータを積極的に集めており、こういった調査には本当に強いと思いました。2000年付近の報告ですからね。
Lactobacillus自体は腸内に常在しているので、プロバイオティクスが原因で菌血症を起こした例は、この値よりもっと低いと思います。
Lactobacillus Rhamnosus GGの投与量が人口レベルで増えても、菌血症のリスクがかわっていない点から、間接的にはなりますが安全性が示唆されています。
まとめ
今回の研究は、フィンランドにおいてプロバイオティクスの使用開始後に重篤な合併症が生じていないかを10年にわたり調査しています。
Lactobacillus Rhamnosus GGの投与量が人口レベルで増えても、菌血症のリスクがかわっていない点から、間接的にはなりますが安全性が示唆されています。
1990-2000年のフィンランドの調査によると…
- Lactobacillusによる菌血症のリスクは1年で0.29/10万人
- プロバイオティクスの消費量が増えても、このリスクは変わっていない