今回はこちらの論文をピックアップし、紹介します。
Corrêa NB, et al. Treatment of acute diarrhea with Saccharomyces boulardii in infants. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2011 Nov;53(5):497-501
途上国を含めると、小児の胃腸炎は
- 死亡の原因として第2位
- 入院の原因として第1位
です。近年はプロバイオティクスの有効性を検証した研究が多数あり、その中でも有効性が確認されたのは、
- Lactobacillus rhamnosus GG
- Saccharomyces boulardii
の2菌株が多いです。
ただし研究結果に一貫性が必ずしもあるわけでなく、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究は、ブラジルで2007-8年に、6ヶ月〜48ヶ月の入院した乳幼児を対象にランダム化比較試験(RCT)が行われました。対象となった患者は、
- 下痢発症後、72時間以内
- 先行する抗菌薬の投与がない
- 血便なし
- 栄養失調なし
- 慢性疾患なし
となります。治療は、
- Saccharomyces boulardiiを 4 x 10^9
- プラセボ(添加剤)
のいずれかを割り付けし、12時間毎に5日間治療しています。
アウトカム
研究のアウトカムは、
- 下痢の期間
となっています。
研究の結果と考察
最終的に、
- プロバイオティクス:90名
- プラセボ:86名
が研究に参加しています。
プロバイオティクス | あり | なし |
年齢 | 23.0 | 21.2 |
性別(男) | 47 | 51 |
Rotavirus (+) | 58.5% | 56.3% |
アウトカムについて
下痢の頻度は入院後に以下のように変化しています。
Probiotics | あり N = 90 |
なし N = 86 |
1日 | 80 | 80 |
2日 | 39 | 69 |
3日 | 29 | 51 |
プロバイオティクスを使用しているグループのほうが、2〜3日目の下痢の症状は軽快していそうです。
このデータで生存曲線を作って見ましょう。
3日間だけなので、少しかっこ悪いグラフですが、プロバイオティクス(赤)を使用したグループのほうが軽快率が良さそうです。
Log-rank検定をしても、統計学的な有意差はありそうでした。
ロタウイルス感染の有無で層別化
ロタウイルス感染の有無で3日後の成績を分けると以下のようになります。
どうやらロタウイルス陽性のグループのほうが治療をしたほうが軽快率は高かったです。
陰性でも同じような傾向にありましたが、推定は不正確で統計学的な有意差もありません。
感想と考察
今回も入院患者を中心にプロバイオティクスの有効性を検証しています。
特にロタウイルス患者においては、有効性がありそうな結果でした。
プラセボは「the excipients(添加剤)」を使用したとありますが、これ以上の詳しい説明がありませんでした。
もちろん研究の全てを疑っているわけではありませんが、プロバイオティクスの研究は全般的にプラセボの設定が曖昧であったり、プラセボを置かない研究が多く、やや評価にためらいが生じてしまいます。
プロバイオティクスにも様々な種類があり、胃腸炎の起因菌も様々です。
どのような方が対象になったのかに思いをはせることで、外的妥当性や一般化も考えていきたいところです。
まとめ
今回の研究はブラジルの6ヶ月〜4歳を対象に、下痢で入院した患者にプロバイオティクスを投与して有効性をみました。
特にロタウイルス胃腸炎には有効性がありそうで、過去の研究とも一致しています。
一方で、ロタでない場合、有効性がありそうな印象ではあるものの、今回の研究では推定が不正確なので、より慎重に評価する必要がありそうです。