今回はプロバイオティクスのユニークな研究を見つけたので紹介させていただきます。
プロバイオティクスが小児の胃腸炎に有効そうな印象はあるのですが、それがなぜなのかはよく分かっていない点も多々あります。
過去の論文を遡ってみたところ、生きたプロバイオティクスを使用することで、IgAの産生する細胞を活性化させていたことを示した研究がありました。
今回はこの論文をご紹介できればと思います。
研究の方法
今回の研究はフィンランドで行われたもので、
- 4歳未満
- ロタウイルス胃腸炎の流行時期に
- 胃腸炎による入院患者
- 低栄養なし
などの小児を対象に行われた研究です。
治療について
治療は小児の胃腸炎に対する標準的なもの(経口補水液など)に加えて、
- 生菌:L casei strain GG
- 加熱処理したL casei strain GG
のいずれかをランダムで小児に投与しています。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 下痢の期間
- 体重の変化
- 抗体価:急性期と回復期
などをみています。
研究結果と考察
最終的に26人の患者が解析の対象となりました。
臨床的なアウトカムについて
まずは臨床的なアウトカムから見ていきましょう。
生菌 N = 13 |
加熱処理 N = 13 |
P | |
体重変化 | +120g | +320 | 0.51 |
下痢の期間 | 1.5d | 1.6d | 0.83 |
体重変化と下痢の期間については、両者とも統計学的な有意差はありませんでした。
IgAの変化について
ロタウイルスに対して特異的な抗体(IgA)を産生する細胞の存在(> 0.5 / 10^6 cells)と、血清IgA価を急性期と回復期で比較しています。
抗体産生細胞 | 生菌 | 加熱処理 | P |
急性期 | 2/9 | 2/8 | 0.66 |
回復期 | 10/12 | 2/13 | 0.002 |
IgA (EIU) | |||
急性期 | 0.04 | 0.1 | 0.52 |
回復期 | 50.7 | 22.4 | 0.04 |
ロタウイルスに対するIgA抗体を産生する細胞の出現割合も、IgAの値も共に生菌を使用したグループの方が成績が良かったです。
考察と感想
臨床試験と生物学的な有効性の両方を見ており、面白い研究だと思いました。
「なぜプロバイオティクスが小児の胃腸炎に有効なのだろうか?」と考えたことは多数ありますが、この研究はその1つの答えになりうると思いました。もちろん、IgAの産生だけでは説明がつかない点もあるでしょう。
この論文の欠点としては、ややサンプル数が少ない点ですね。13例同士の比較では、臨床的なアウトカムは難しい気がしました。
また、今回認めた生物学的なメリットが、臨床上のメリットとリンクできなかった点もやや残念に思えました。
まとめ
生きたプロバイオティクス(L casei strain GG)を、ロタウイルス性胃腸炎の小児に投与することで、ロタウイルスに対する抗体を産生する細胞数を増やしたり、IgA抗体の産生を誘導している可能性があります。