前回、プロバイオティクスの安全性について、フィンランドのデータを使用して見てきました。プロバイオティクス内服に伴う重篤な感染症のリスクは極めて低いですが(0.29/10万/年)、全くいないというわけではなさそうです。
フィンランドで報告された89例のLactobacillus菌血症について調査したデータがありましたので、今回はこちらをご紹介させていただければと思います。
成人のデータが多く、小児への一般化にやや難がある点はご了承ください。
- プロバイオティクスによる重篤な感染症は稀
- 免疫抑制、長期入院歴、外科手術後に起こることが多い
- 重篤な基礎疾患がある場合は特に注意が必要
研究の方法
対象となったのは、
- 1990〜2000年において
- ヘルシンキ大学病院でLactobacillusの菌血症を起こした人
です。
最終的にLactobacillusの微生物検査が行われ、確定された47例の症例に的を絞って
- 菌血症を起こしやすい傾向
- より重篤な感染症を起こしやすい傾向
解析をしています
研究結果と考察
解析の対象となった患者のうち、82%は重篤あるいは致死的な合併症がありました。
平均年齢は60歳、発熱あるいは低体温がある例が約80%、平均して5〜7日ほど入院歴のある方でした。
Lactobaciilusによる菌血症
菌血症を起こしやすかった方は、
- 免疫抑制状態(ステロイド(> 7.5 mg)や化学療法)
- 長期入院歴
- 外科処置:カテーテル挿入中
が該当する方でした。
さらに死亡例の検討もしていますが、
- 急速で重篤な合併症がある(OR. 15.8)
場合に、Lactobacillusの菌血症を伴い、のちに死亡している傾向があるようでした。
「急速で重篤な合併症」ですが、MacCable and Jackson分類のclass 4が該当しており、「6ヶ月以内の死亡が予測される患者群」とのことでした。
感想と考察
プロバイオティクスにおいて、重篤な感染症を来たしやすい因子を検討した研究でした。
基本的には安全な薬ですが、例外もあり得ることは臨床医としても覚えておいたほうが良いかもしれません。成人が中心の研究で、小児には必ずしも当てはまらない点がありますが、免疫抑制状態、カテーテル挿入中、長期入院歴のある方には投与は慎重になった方が良いかもしれませんね。
まとめ
プロバイオティクスにおいて、重篤な感染症を来たしやすい因子を検討した研究でした。
成人が中心の研究で小児には必ずしも当てはまらない点がありますが、免疫抑制状態、カテーテル挿入中、長期入院歴のある方には投与は慎重になった方が良いかもしれませんね。
プロバイオティクスは…
- 基本的には安全で、重篤な感染症のリスクは低い
- 一方で、免疫抑制、カテーテル挿入中、長期入院歴で菌血症を生じた報告はある
- データは成人が中心で、小児にへの一般化にはやや難がある